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INSIGHT
ナッシュ均衡とは?利得表の見方や求め方、例題でゲーム理論をわかりやすく解説
2026.08.19
2026/8/19 04:59
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日々の事業運営においては意思決定は連続して行われます。他社の動向を考慮した選択はとても重要です。
ビジネスの現場では自社の利益を最大化するための判断が必要になりますが競合の存在を無視することはできません。
ゲーム理論と呼ばれる応用数学の分野では、複数のプレイヤーが相互に影響を及ぼし合う状況における、合理的な意思決定を分析します。利害が対立あるいは一致する関係にある複数の主体(プレイヤー)が、互いの行動を考慮しながらどのような行動をとるべきかを数学的に分析する理論です。
今回は、ナッシュ均衡にスポットを当て詳しく解説します。ナッシュ均衡とは、他の参加者が戦略を変更しない限り、どの参加者も自身の戦略を変更することで利益を得られない状態のことです。
[[筆者|膠着状態ですね]]
ナッシュ均衡の基本的な考え方や利得表の具体的な見方から実際の求め方まで例題を使いながらわかりやすく詳しく解説していきます。
さらに実際の経営課題に対する解決策の糸口も見つけていただける内容となるよう執筆いたしました。ぜひ最後までご覧ください。
ゲーム理論とナッシュ均衡
ゲーム理論の基本的な考え方
ゲーム理論は1944年にジョン・フォン・ノイマンとオスカー・モルゲンシュテルンの共著によって体系化された経済学や経営学に応用される理論体系です。

写真:Wikipedia|John von Neumann ジョン・フォン・ノイマン
複数の参加者がそれぞれの利益を追求する状況において、各々の選択が全体の結果にどのような影響を与えるかを論理的に導き出します。
ゲーム理論では参加者が互いに合理的な判断を下すという前提のもとで、相手の出方を予測しながら自身の行動を決定する過程を分析の対象としています。
ゲーム理論は市場競争や交渉事など、様々なビジネスシーンの分析に応用できます。ですので経営戦略を練る上ではとても有用です。
[[筆者|競合が全く存在しないビジネスも珍しいため、基本的に相手が存在することになり、このような環境ではゲーム理論が役立つことがあります]]
ナッシュ均衡の定義と意味
ナッシュ均衡はジョン・ナッシュによって定式化されました。ジョン・ナッシュはアメリカ人の数学者で2015年に亡くなりました。

写真:Wikipedia|John Forbes Nash Jr.
ナッシュ均衡とは参加者全員が互いの戦略を知った上で、各自が最適な選択をしている安定した状態を指します。「参加者全員が互いの戦略を知った上で」です。
各参加者が自分の選択を変更してもこれ以上利益が増加しないと判断し、全員が現在の選択にとどまります。まさに膠着状態です。
すべての参加者の行動が、互いに最適反応となっている状態が均衡点となり、状況が変化しない限りその状態が維持されると考えられています。
[[筆者|最適反応とは、相手の特定の行動に対して自らの利益を最大化できる行動のことです。簡単に言うと一番自分が儲かる行動です]]
ビジネス上の意思決定とナッシュ均衡
事業展開における意思決定では、自社の都合だけで価格設定や投資計画を決定すると、予期せぬ不利益を被る可能性があります。
競合が価格を引き下げた場合に自社がそのままの価格を維持すれば顧客を奪われ、売上が減少する結果を招いてしまいます。
ですので、他社の動きに合わせてこちらも価格を変更したりするのですが、ここでナッシュ均衡やゲーム理論が役立ちます。どう役立つのか、以降でナッシュ均衡と利得表について詳しく解説していきます。
ナッシュ均衡の利得表の見方
利得表の構造と要素
利得表とは、ゲームの参加者が選択できる戦略の組み合わせと、その結果として得られるそれぞれの利益や損失をマトリックス状にまとめた表のことです。利得表を用いた具体的な分析手法について確認してみましょう。
2人の参加者がいる場合に、行と列にそれぞれの参加者の選択肢を配置し、交差するマスにそれぞれの結果の数値を記述します。
| |||
|---|---|---|---|
戦略1 | 戦略2 | ||
プレイヤーA | 戦略1 | (Aの利得, Bの利得) | (Aの利得, Bの利得) |
戦略2 | (Aの利得, Bの利得) | (Aの利得, Bの利得) | |
相手がどの行動を選んだ場合に、自社がどのような結果を得るのかを一目で把握できるようになります。
具体的な利得表の例をいくつか確認してみましょう。
例1. 企業の価格競争
双方が高価格を維持すれば互いに高い利益を得られますが、相手を出し抜こうと低価格に設定すると一時的に利益を独占できます。
しかし双方が低価格を選択すると共倒れとなり、全体の利益が最小になるという構造です。
企業B | |||
|---|---|---|---|
高価格 | 低価格 | ||
企業A | 高価格 | (50, 50) | (10, 80) |
低価格 | (80, 10) | (20, 20) | |
例2. 広告費の投下
双方が広告を控えた方が利益率は高くなりますが、相手だけが広告を出すとシェアを大きく奪われてしまいます。防衛策として自社も広告を出さざるを得ず、結果として過剰な広告競争に陥って双方の利益が圧迫されます。
企業B | |||
|---|---|---|---|
広告なし | 広告あり | ||
企業A | 広告なし | (100, 100) | (20, 150) |
広告あり | (150, 20) | (50, 50) | |
例3. 新技術の規格統一
両社が異なる規格を採用すると市場が混乱して双方とも利益を得られません。両社が同じ規格を採用すれば、市場が立ち上がり大きな利益を得られますが、どちらの規格を標準とするかでそれぞれの得られる利益に差が生じます。
企業B | |||
|---|---|---|---|
規格A採用 | 規格B採用 | ||
企業A | 規格A採用 | (100, 50) | (0, 0) |
規格B採用 | (0, 0) | (50, 100) | |
例4. 市場への新規参入
双方が強気で参入すれば供給過多となり、大きな損失を被るという厳しい状況を想定します。一方が強気で一方が弱気であれば強気な企業が利益を独占できますが、双方が弱気で参入を見送った場合は妥協的な結果にとどまる構造となります。
企業B | |||
|---|---|---|---|
強気(参入) | 弱気(見送り) | ||
企業A | 強気(参入) | (-50, -50) | (100, 0) |
弱気(見送り) | (0, 100) | (10, 10) | |
[[筆者|これらの例のような、よくありがちな均衡状態を利得表に書き出し、ナッシュ均衡を把握します]]
では利得表はどのように作成するのでしょうか。
プレイヤーと戦略の設定
利得表を作成する最初の段階として、ゲームに参加するプレイヤーと各プレイヤーが取り得る戦略を明確に定義する必要があります。プレイヤーとは、意思決定を行う個々の主体であり企業や個人のことを指します。
戦略とは、プレイヤーが選択できる行動の選択肢のことです。双方が取り得るすべての行動パターンを洗い出しましょう。
利益と損失の数値化
つづいて各戦略の組み合わせによって生じる結果を、具体的な数値として表のマスに書き込んでいく作業を行います。利得とは、特定の行動を選択した結果としてプレイヤーが得られる利益や効用のことです。
売上高や利益額といった金額ベースの数値を用いることが多い一方で、市場シェアの変動やブランド価値の向上といった要素を相対的な数値として表現することもあります。
正確な分析を行うためには、各結果の数値を客観的なデータに基づいて可能な限り精密に算出しましょう。
ナッシュ均衡の求め方
相手の戦略に応じた最適反応
次は設定した利得表からどのようにしてナッシュ均衡を見つけ出すのか、手順を確認しましょう。
具体的な例として企業の価格競争の利得表を用いて、状態の変化を見ていきます。
企業B | |||
|---|---|---|---|
高価格 | 低価格 | ||
企業A | 高価格 | (50, 50) | (10, 80) |
低価格 | (80, 10) | (20, 20) | |
プレイヤーAの特定の戦略に対して、プレイヤーBが自身の利得を最大化できる最適反応を特定し、表の該当する数値に印をつけます。企業Bにとって有利な選択肢の数値に下線を引いて確認してみましょう。
企業B | |||
|---|---|---|---|
高価格 | 低価格 | ||
企業A | 高価格 | (50, 50) | (10, 80) |
低価格 | (80, 10) | (20, 20) | |
同様にプレイヤーBの各戦略に対してプレイヤーAが自身の利得を最大化できる最適反応を選び出し、印をつけていく作業を繰り返します。相手のすべての選択肢に対して自分の最適な行動をシミュレーションすることで、意思決定の根拠となるデータが揃います。
企業B | |||
|---|---|---|---|
高価格 | 低価格 | ||
企業A | 高価格 | (50, 50) | (10, 80) |
低価格 | (80, 10) | (20, 20) | |
自社の製品に対して競合がどのような価格設定をしてくるのかを、過去のデータから推定して複数のパターンを用意します。パターンごとに自社が取り得る対策をすべて洗い出し、一つひとつの行動に対する利益率を算出し記録する作業を行います。
相手の立場に立った予測が不正確であれば、導き出される最適反応も誤ったものになりかねません。市場のトレンドや消費者心理といった定性的な情報も考慮に入れながら、予測の精度を高めていく必要があります。
相互の最適反応が一致する点
双方の最適反応をすべて確認した後でお互いの印が重なっているマスを探し出します。両者の印が重なっているマスは互いに相手の行動に対する最適反応を選択していることを示しており、一方が戦略を変えると利得が減少してしまいます。
企業B | |||
|---|---|---|---|
高価格 | 低価格 | ||
企業A | 高価格 | (50, 50) | (10, 80) |
低価格 | (80, 10) | (20, 20) | |
双方が戦略を変更する動機を持たない、安定した状態のマスこそがナッシュ均衡の点です。利得表の数値を順に追いかけて最適反応を追うことで、複雑な状況下でも論理的に均衡点を特定することが可能です。
相手の出方をうかがいながら戦略を微調整していくうちに、最終的に双方が落ち着く場所、それがナッシュ均衡点です。
この均衡点から外れた選択をした場合どちらか一方が利益を損なうことになり、現状維持への圧力が働きます。
[[筆者|安定した状態が続くということは、市場でそれ以上の競争、例えば価格や品質の競争が起きにくくなる状況を作り出す、ということになります]]
複数の均衡が存在するケース
利得表を分析していくと双方が最適反応となるマスが1つではなく、複数存在する状況に出会うことがあります。複数のナッシュ均衡が存在する場合どちらの均衡点に落ち着くかは、参加者間の過去の経験や事前のコミュニケーションによって変化します。
ここでは規格統一のモデルを用いて複数の均衡点が存在する状態を表で確認してみましょう。両社の最適反応が一致するマスが2つ存在していることがわかります。
企業B | |||
|---|---|---|---|
規格A採用 | 規格B採用 | ||
企業A | 規格A採用 | (100, 100) | (0, 0) |
規格B採用 | (0, 0) | (50, 50) | |
技術規格の標準化を巡る競争などでは両社が同じ規格を採用した方が全体の利益が大きくなる複数の均衡が存在します。このような状況下では自社に有利な均衡点に相手を誘導するための事前の働きかけが重要な意味を持ちます。
[[筆者|直接の働きかけでなくとも、業界の暗黙の了解があることで双方がより高い利得を得られる均衡点を選択しやすくなるということもありますね]]
政府のガイドラインや業界団体の推奨などがどちらの均衡点を選択するかを決定づける要因として働くこともあります。
このような外部環境の変化を敏感に察知し、複数の均衡点の中でどれが実現する可能性が高いかを予測する、情報収集能力は重要ですね。
ナッシュ均衡・ゲーム理論の例題
囚人のジレンマ
ゲーム理論の基礎として広く知られている囚人のジレンマについてご紹介します。
囚人のジレンマは1950年に数学者のアルバート・タッカーが考案しました。アメリカのシンクタンク、ランド研究所の行った実験をもとにタッカーがゲームの状況を囚人の黙秘や自白にたとえたため、この名前がついていると言われています。

写真:Wikipedia|サンタモニカのランド本部
囚人のジレンマとは、互いに協力した方がよい結果になるにもかかわらず、自身の利益を追求した結果として双方にとって好ましくない結果に陥る構造のことです。
共犯関係にある2人の容疑者が別々の部屋で尋問を受けており、自白するか黙秘するかの選択を迫られている状況を想定します。双方が黙秘すれば軽い刑で済みますが、「相手が黙秘している間に自分が自白すれば自分だけ無罪になる」という条件が提示されています。
容疑者B | |||
|---|---|---|---|
黙秘 | 自白 | ||
容疑者A | 黙秘 | (軽い刑, 軽い刑) | (重い刑, 無罪) |
自白 | (無罪, 重い刑) | (中程度の刑, 中程度の刑) | |
具体的な数字にすると以下のようになります。
容疑者B | |||
|---|---|---|---|
黙秘 | 自白 | ||
容疑者A | 黙秘 | (2年, 2年) | (10年, 0年) |
自白 | (0年, 10年) | (5年, 5年) | |
個人の合理性と集団の合理性が対立する状況を鮮やかに描き出しており社会科学の様々な分野で参照されています。有名なので知っている方も多いですね。
互いに協力し合うことで全体の利益を最大化できるにもかかわらず個人の保身がそれを阻害する構造を数学的に表現しています。
自白という選択肢は相手の行動がどちらであったとしても自分にとって有利な結果をもたらすため支配的な戦略と呼ばれます。支配的な戦略が存在する状況では参加者は他の選択肢を検討する余地を持たず結果的に非効率な均衡点に引き寄せられていきます。
協調と裏切りのジレンマ
このような状況下においては、相手がどちらの行動をとったとしても自分にとっては自白した方が刑が軽くなるため双方とも自白を選択します。
両者が自白を選択した状態がナッシュ均衡となりますが、双方が黙秘した場合よりも重い刑を受けます。これは非効率な結果です。
個人の合理的な選択が全体の最適な結果とは一致しないという、ジレンマの構造はビジネスにおける価格競争など多くの場面で観察されます。自社の利益だけを追求する行動が、結果的に市場全体の収益性を悪化させる危険性を示唆する重要な理論です。
短期的な利益の追求が結果として双方にダメージを与えるという教訓は、企業間の競争関係にもそのまま当てはまります。自社だけが利益を独占しようとする利己的な行動が、巡り巡って自社の首を絞めるという皮肉な結果を招くことになる、ということを示唆しています。
ナッシュ均衡を打破するには、外部からのルール設定や罰則の導入といった制度的な介入が有効になる場合があります。
コモンズの悲劇
関連する考え方としてコモンズの悲劇と呼ばれる社会的なジレンマの構造も確認しておきましょう。
コモンズの悲劇とは、多数の者が利用できる資源に対して各人が自己の利益を追求して過剰に利用した結果、資源が枯渇し全員が不利益を被る現象のことです。共有地の悲劇とも言います。

写真:Wikipedia|コモンズの悲劇
誰でも牛を放牧できる共有の牧草地において、牧場主たちが利益を増やすために牛の数を増やし続けると牧草が食べ尽くされてしまいます。
短期的な自己利益の追求が長期的な全体の損失を招くという構造です。
各個人が合理的に行動した結果として全体の資源が破壊されてしまう、という過程は私たちの身の回りにもよくある、社会問題の根底です。水資源の枯渇や海洋資源の乱獲など適切な管理が行われない共有財産が陥る危機を説明する理論としても広く知られています。
ビジネスの文脈においては特定の市場で各社が一斉に大量の広告を投下して消費者の関心を奪い合う状況にも当てはまると言えます。
業界内での協調やガイドラインの策定が議論されるのは、このような市場全体の魅力が低下し誰も利益を得られなくなる、という事態を防ぐためのものでもあります。
ナッシュ均衡と経営課題の解決策
価格競争に陥る原因と対策
さて実際の事業運営において悩まされる、価格競争の問題についてゲーム理論の視点から分析してみます。
値下げには根本的なジレンマが存在する
競合他社が製品の値下げを行った場合、自社が価格を維持すれば売上が減少し値下げに追従すれば利益率が悪化するというジレンマが生じます。
双方が値下げを選択する状態は囚人のジレンマにおけるナッシュ均衡と同様の構造であり、業界全体の収益性を低下させる原因となります。
[[筆者|スマホが市場に浸透したばかりの当時、大手通信会社各社がスマホの月額使用料をほぼ同じ高価格で維持し続けるということがありました。今では考えられませんが国民の大半が月額1万~2万円支払っていました。各社値引きを断じてしなかったのは誰も得しないということがわかっていたからですね。結局は政府の介入によって大幅に使用料が下がるまで、高い使用料は変わりませんでした]]
値下げは悪手。ではどうすべきなのか
過度な価格競争を回避するためには製品の付加価値を高めたり、独自の市場を開拓したりすることで価格以外の競争軸を確立する戦略が有効でしょう。
低価格路線で争うのではなく、品質の向上や充実したアフターサービスによって顧客の支持を集める独自性を打ち出すことが重要です。不毛な値下げ競争から抜け出し、安定した利益を確保する道を切り開く必要があります。
自社のブランド価値を高め顧客から強い支持を得ることができれば、価格競争に巻き込まれなくなります。製品の機能性だけでなく企業が持つストーリーや理念に共感してもらうことで、他社には真似できない独自のポジションを確立します。
値下げは一時的に売上を増加させる効果がありますが、利益率の低下は長期的な製品開発の資金を奪う結果につながります。また消費者の参照価格の低下を招きます。
価格競争を回避するための根本的な対策としては、研究開発への投資を継続すること、そして市場に常に新しい価値を提供し続けるサイクルを構築すること、が挙げられます。
投資判断と他社の動向予測
新規事業への参入や大規模な設備投資を決定する際、他社の動向を予測し適切な判断を下す必要があります。
需要を超える供給を発生させないこと
市場の需要が限られている状況で、複数社が同時に多額の投資を行えば供給過多となり投資資金の回収が困難になる危険性があります。
先行して投資を行い市場の優位性を確保する戦略や、他社の動向を見極めてから差別化した形で参入する戦略など、様々な選択肢があります。
これらの選択肢から、自社の資金力や技術力と競合の強みを冷静に比較検討し、リスクを許容できる範囲で最適な行動を選択する思考が必要です。
市場の成長性や技術の進歩といった不確実な要素を利得表に組み込み様々なシナリオを想定した上で投資のタイミングを見極めます。撤退の基準や計画変更の条件を事前に定めておくことで状況の変化に応じた柔軟な意思決定が可能になり損失の拡大を防ぐことができます。
チキンゲーム化を避ける
複数の企業が同じ市場を狙って巨額の資金を投じる状況ではチキンゲームと呼ばれる我慢比べの様相を呈することがあります。
[[筆者|大企業各社がいっきに参入してくる際などによく見られますね。直近ではまさにAI関連事業ではないでしょうか]]
相手が投資を諦めるまで自社の投資を継続するという消耗戦は、双方に致命的なダメージを与えるため見極めの基準が重要になります。
自社の体力を正確に把握しどこまでならリスクを許容できるのか、という防衛ラインの設定が不可欠です。勝ち目がないと判断した場合には速やかに撤退する決断も必要になります。
提携と交渉で利益を最大化することができる
他社との業務提携や取引先との価格交渉などにおいても、お互いの利害を調整し最適な合意点を見出すことはできるはずです。
ゼロサムを回避する
交渉において自社の要求ばかりを押し通そうとすれば、相手の反発を招き提携自体が破談になるリスクが高まります。
双方が納得できる条件を模索し協力体制を構築することで、単独では得られない規模の利益を創出できる可能性があります。相手の立場や重視している条件を利得表の考え方を用いて分析し、互いにとってメリットのある均衡点を見つけ出す、交渉術が活躍するでしょう。
[[筆者|共倒れしても仕方ありません。むしろお互いの強みを認め協力した方が自社のため、そして顧客のためにもなります]]
利益の奪い合いというゼロサムゲームをやめて、双方が利益を拡大できるプラスサムゲームの状況を作り出すアイデアを生み出しましょう。
自社の強みを提供して相手の弱みを補い合うような補完関係を構築できれば、長期的に安定したパートナーシップを結ぶことができます。
交渉は事前準備が重要
交渉のテーブルにつく前に、相手が抱えている課題や組織内の力関係などを調査し相手の行動原理を予測する作業が、最終的な交渉の成果を大きく左右します。
相手にとって譲れない条件と妥協できる条件を、利得表の考え方を用いて整理することで落とし所となる均衡点を見極めやすくなります。
短期的な利益を相手に譲ることで、中長期的な協力関係を引き出し将来的に大きな見返りを得るという高度な交渉戦略も考えられます。とにかく目先の損得だけにとらわれず、時間的な広がりを持たせて全体の利益を最大化するシナリオを描くことを目指しましょう。
ナッシュ均衡・ゲーム理論を意思決定に活かす
さて本記事ではナッシュ均衡の基本となる考え方から、利得表の具体的な見方や求め方、ビジネスにおける活用法まで幅広く解説してきました。
ナッシュ均衡やゲーム理論を頭に入れておくと、他者の動向を考慮した合理的な状況分析を行うことで、不毛な価格競争を回避し自社の優位性を保つ意思決定が可能になります。
目先の損得にとらわれることなく長期的かつ全体最適の視点を持つことが、事業を安定して成長させる上で有効なアプローチとなります。競合の行動を予測し自社の最適反応を重ね合わせて分析する思考法は、あらゆる交渉や投資判断の現場で役立つはずです。
まずは自社が置かれている市場環境や競合との関係性を利得表の形で整理し、客観的なデータに基づいた論理的な意思決定を試みてください。健全な発展と持続的な事業展開にお役立ていただければ幸いです。
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当記事の執筆者
CIT経営開発事務所 代表
井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)
IT・事業コンサルタント
IT・開発エンジニア
行政書士R6合格者未登録
大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。


