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データサイエンス統計 | 統計調査 企画・設計

#リスキリング #レジリエンス #ICT教育 #ITスキル #データサイエンス

統計調査
企画・設計・実施

国や公的機関が行っている統計調査は非常に大規模で、一般企業ではとても実施できる規模ではありません。

規模が大きいということはそれだけコントロールが難しいということであり、正しい統計を作るための難易度は計り知れません。政府はこのような統計を毎年のように作成し、そのデータは信頼性の高い情報として、公的機関だけでなく民間でも活用されています。信頼性が高く、かつ有用な統計を作成するための企画方法や設計を公的統計の仕組みから学んでみましょう。

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3 統計調査の基本知識

正しく、有用な統計を作成するにあたり、統計の企画や実施、設計について学ぶことはとても重要です。

一連の統計を行う統計機構や実際に行われている調査方法から得られることは多いでしょう。

これらの構造や規定を、公的統計をもとに確認してみましょう。

3.1 統計機構

統計の作成を行う組織を「統計機構」といいます。

各国が様々な統計を出していると思いますが、それはつまり各国に統計機構が存在していることを示しています。

3.1.1 統計機構の種類

統計機構は分散型と集中型2つのタイプに分かれています。

<分散型>・・・各行政機関に統計機能を分散する

■特徴
・各行政機関の所管の統計ニーズに的確かつ迅速に対応できる
・所管行政の知識を統計に生かすことができる

■デメリット
・分散するので、統計の体系的整備に難がある
➡類似統計の重複、相互比較の困難など

■採用国
・アメリカ、フランス、日本など
<集中型>・・・統計機能を1つの機関に集約

■特徴
・統計の体系的整備が容易
・統計そのものの技術の向上
・専門性の深堀りに適している

■デメリット
・ニーズへの迅速、的確な対応が困難

■採用国
・カナダ、オーストラリアなど

日本は分散型の統計機構を採用しており、各府省がそれぞれ統計を作成しています。

例えば、国勢に関わるものは総務省、農林業センサスは農林水産省、学校基本調査は文部科学省、など専門ごとに統計を作成しています。

3.1.2 総務省政策統括官(統計制度担当)

日本では各府省が専門的な統計を作成します。その結果、同じような統計調査を重複して行ってしまったり、他の統計と相互比較できない形式になってしまうなどの問題が生じます。

これを解消するには各府省を横断的に調整する必要があります。

そこで総務省に、総務省政策統括官(統計制度担当)を置き、各府省の統計調査計画の審査や承認、統計基準の整備をさせています。

総務省
└総務省政策統括官(統計制度担当)

3.1.3 統計委員会

総務省政策統括官(統計制度担当)を置く前に、統計委員会が各府省を調整すればいいのではないか?と思ったかもしれませんが、統計委員会はまた別の重要な機能の為におかれています。

それは公的統計に関する第三者機関としての立場です。

第三者機関とは基本的に、専門的かつ中立、公正な判断のために置かれるものです。

統計委員会は、

統計法に定める調査審議を行う

関係大臣へ必要な意見を述べる

など、重要な役割を担っています。

また、統計委員会に意見を求めなければならないとされている事項には以下のようなものがあります。

<総務大臣>
・公的統計基本計画の案の作成
・基幹統計を指定するとき(統計法7条1項)
・基幹統計調査の変更、中止の求めをするとき(統計法12条2項、措置要求)
・統計基準を定めようとするとき(統計法28条2項)
・行政機関の長から基幹統計の承認の申請があったとき(統計法9条4項)
・行政機関の長に基幹統計作成方法の改善を意見するとき(統計法26条3項、基幹統計の作成方法の通知等)
・基幹統計を作成する行政機関以外の者への協力要請(統計法31条2項、協力の要請)
<内閣総理大臣>
・国民経済計算の作成基準を定めるとき(統計法6条2項)
<行政機関の長>
・基幹統計調査に係る匿名データを作成するとき(35条2項)

上記以外にも、統計法上に政令・総務省令に従う、又は定めるとされている各種規定について、その制定や改廃についても意見を聞く必要がある、とされています(統計法45条の2、委員会の意見の聴取)。

統計委員会の委員は、学識経験のある者から内閣総理大臣が任命します(統計法47条)。

統計委員会には令和5年1月時点で、8つの部会が設置されています。

諮問の内容によって、対応する部会が審議を行います。

各部会と所掌事務に関するものは以下です。

<統計委員会の部会構成>

・企画部会
(統計制度の発達、改善、他の部会に属さない事項)

・国民経済計算体系的整備部会
(国民経済計算、産業連関表に関する事項)

・人口・社会統計部会
(人口、労働、家計、住宅、厚生、文化、教育など)

・産業統計部会
(農林水産、鉱工業、公益事業、建設統計)

・サービス統計・企業統計部会
(通信、運輸、商業、貿易、物価、サービス、流通、環境、財政、金融統計、企業統計)

・統計基準部会
(統計基準に関する事項)

・統計制度部会
(政省令の制定又は改廃。基幹統計調査に係る匿名データ)

・統計作成プロセス部会
(統計作成のプロセスの水準向上)

例えば、行政機関は基幹統計に係る匿名データの作成ができたと思います。その際「統計委員会の意見を聴く」こととされていますが。このとき意見を言うのは「統計制度部会」ということになります。

3.2 統計調査の企画

政府が行う統計には様々なものがあります。

例えば、就業実態を明らかにし雇用政策等の基礎資料を作るための「労働力統計」、学校教育行政に必要な事項を明らかにする「学校基本統計」などがあります。

これらは調査の対象が異なっており、対象の何を調査するのかという調査事項も異なります。

各目的に応じた統計のための準備、「企画」がとても重要です。

調査の企画段階で検討する必要がある事項として、

・調査対象
・調査単位
・調査実施時期
・調査事項
・調査方法

などがあります。

公的統計における企画段階の各種項目について詳しく確認してみましょう。

3.2.1 調査対象

調査対象とは、統計の目的とする対象のことです。

例えば「学校基本統計」では「学校」、「労働力統計」なら「就業者や求職者など」といった者のことです。

統計によって、個人や世帯であったり、企業や法人、学校、団体など様々な形をとります。

3.2.2 統計単位

統計単位とは、調査単位の集団を構成する要素のことを指します。

例えば、総務省「社会生活基本調査」の統計単位は「個人」、財務省「法人企業統計調査」の統計単位は「企業」となります。

簡単に言うと、「この統計は誰のことを明らかにする統計なのか?」の「誰」というのが統計単位です。

3.2.3 調査単位

調査単位とは、調査実務において自由に設定した単位のことです。統計単位と似ていますが別ものです。

実際の調査では、調査単位に設定した者に対して調査を実施することになります。

例えば、「国民の生活状況を個人レベルで調べよう!」という場合、統計単位は「個人」から変わることはありませんが、調査単位は「個人」にしたり「世帯」にしたり、場合によっては「地域」にすることもできます。

そして実務的には調査単位に対して調査を実施しますので、「個人の生活状況を調べる」場合でも「世帯」に設定した場合は「世帯」に調査票を送ります。

公的統計では統計単位と調査単位が一致するものと異なるものがあります

<統計単位と調査単位が一致している統計>
・法人企業統計調査(財務省)
・工業統計調査(経済産業省)
<統計単位と調査単位が一致しない統計>
・社会生活基本調査(総務省)
└統計単位➡個人、調査単位➡世帯

・海外事業活動基本調査(経済産業省)
└統計単位➡海外現地法人、調査単位➡本社のある親会社

・地方公務員給与実態調査(総務省)
└統計単位➡個人、調査単位➡地方公共団体

・港湾調査(国土交通省)
└統計単位➡港湾、調査単位➡港湾管理者等

各統計の調査単位や調査対象の範囲はe-Statや調査計画に記載されています。

法人企業統計調査の場合は以下のような情報がe-Statから確認できます。

(e-Statより一部抜粋)

調査単位

企業
法人・団体

選定の方法

無作為抽出(全数層あり)

調査方法

郵送調査
オンライン調査

使用する統計基準

日本標準産業分類

調査周期

四半期
1年

承認年月日

2023-11-29

適用年月日

2023-11-29

3.2.4 事業所の定義

事業所

「企業」ではないのか?ということなのですが、例えば日本各地に支店を持つような企業の場合、本店と全ての支店をまとめて1カウントとすると地域別の実態データがとれません。

そのため、たとえ同じ企業であっても場所的な単位で分けて考えよう、というのが「事業所」になります。

公的統計で言う「事業所」は、単に仕事が行われている場所というものではなく、どのような場合「1事業所」としてカウントするのか、が厳密に定義されています。

事業所の定義は、日本標準産業分類の一般原則において示されています。

日本標準産業分類」は統計委員会が設定している「統計基準」です。

公的統計は統一性の確保のため統計基準に従って作成する必要があります(統計法28条)。

日本標準産業分類における事業所とは、原則次の要件を満たすものをいいます(一般原則、事業所の定義)。

(1)経済活動が単一の経営主体の下において一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること。
(2)財又はサービスの精算と供給が、人及び設備を有して、継続的に行われていること。

あわせて以下のような要件もあります。

・1つの構内における経済活動が、単一の経営主体によるものであれば原則として1つの事業所とし、1つの構内であっても経営主体が異なれば経営主体ごとに別の区画としてそれぞれを1つの事業所とする
・1つの区画であるかどうかが明らかでない場合は、売上台帳、賃金台帳等、経営諸帳簿が同一である範囲を1つの区画とし、1つの事業所とする。

簡単に言うと、同じ場所にあって経営主体も同じなら1つ、同じ場所でも経営主体が違うなら2以上になり、区画がよくわからない場合は帳簿上同一の範囲を1とすると言うことです。

ちなみに、道路を挟んで本棟と別棟がある場合でも帳簿上同一で分けられない場合は1つの事業所、もし帳簿が同一でなければ2つの事業所になります。

これにより定められる事業所としては、

工場製作所事務所営業所商店飲食店旅館娯楽場学校病院役所鉱業所農家

などと一般的に言われているものが該当します。

事業所の定義で疑義が生じがちなパターンをいくつか挙げます。

・同一ビル内に経営主体が異なる店舗がある
➡別の事業所とみなす

・特定の事業所を持たない個人タクシー
➡本人の住居を事業所とする

・建設工事現場からと現場を管理する事務所が離れている
➡現場を事業所とせず、現場を管理する事務所に含めて1の事業所とする

・日々従業者が異なり、賃金台帳もない詰め所や派出所、とそれを管理する事務所が離れている
➡詰め所、派出所を事業所とせず、管理する事務所に含めて1の事業所とする

・1つの敷地内に中学校と高校が併設されている
➡学校の種類ごとに別の事業所とする(この場合の学校は学校教育法の規定による学校)

3.2.5 世帯の定義

個人が統計単位の統計では、ほとんで「世帯」を調査単位として実施しています。

統計調査における世帯の定義は

一戸建て

二世帯住宅

共同住宅(アパート、マンションなど)

下宿、間借り

等で分けて定義されています。

各定義の詳細は以下です(国政調査の場合)。

(1)一戸建ての場合
・家族で住んでいる➡家族で1世帯
・一人で住んでいる➡一人で1世帯
(2)二世帯居住用住宅の場合
・それぞれの居住部分が「住宅の要件」を満たす場合、各戸ごと1世帯とする。
・住宅の要件(a~eをすべて満たす)
a.壁など固定的な仕切りで完全に遮断されている
b.専用の居住室
c.専用の出入口
d.専用の炊事用流し(台所)
e.専用のトイレ
(3)長屋建て(テラスハウスなど)、アパート、マンション
・各戸ごとに1世帯とする。但し、友人と共同で一戸に住んでいる場合は一人ひとりを一戸とする
(4)下宿、間借り、下宿している人がいる一般住宅
・家主の家族➡1世帯
・単身で下宿、間借りしている➡一人ひとりを1世帯とする
・夫婦、親子など家族で下宿、間借りしている➡その家族ごとに1世帯

普段アバウトに捉えがちな世帯ですが、調査対象として網羅するには上記のように様々な定義が必要になります。

3.2.6 統計調査の企画から公表までの流れ

統計調査の企画から公表までは以下のような流れで行われます。

企画

準備

実施(実査)

審査・集計

公表

工程の詳細を見ていきましょう。

<企画>
・調査の目的
・調査対象
・調査単位
・調査の実施時期
・調査事項
・調査方法
・調査日程
・実施方法
・必要経費
などを決定
<準備>
・企画内容を基に調査票や記入の仕方など調査書類を作成
・調査に必要な実施体制を整備
・地方自治体、統計調査員、民間事業者等へ調査方法などを説明
<実施(実査)>
国の職員、地方自治体の職員、統計調査員、民間事業者等による、
・調査対象の把握
・調査票の配布、回収
・調査書類の検査、提出
<審査・集計>
国の職員、地方自治体の職員、統計調査員、民間事業者等における、調査の各段階での
・調査票の審査
・補記、訂正
・調査票の内容の入力
・入力内容の検査
・結果の集計
・結果表の作成
<公表>
・集計結果の分析
・解説の作成
・インターネット等による結果の公表
・報告書の作成

3.2.7 統計調査の企画段階における留意事項

統計調査の企画は、統計調査全体の方向性を決める重要なプロセスです。

企画段階で留意する必要のある事項について、以下があります。

統計調査を実施する必要があるか確認する

既存のデータを利用することで、必要なデータを得ることができないか検討します。

調査には費用がかかりますので、もし既存のデータから統計を作成できれば費用を節約できます。

そしてこのときの費用というのはもちろん税金から得た予算になりますので、無駄遣いできません。

調査の目的をよく吟味して各事項を定める

目的に沿う形で集計内容や調査事項、調査の時期、方法を決定します。

設定した調査事項では必要なデータを作るのに足りなかった、などという事態は避けなければなりません。

調査にかかる経費と結果精度のバランスをとる

調査は細かく行おうと思えばいくらでも詳細につきつめることができます。

ですが、詳細に行うほど費用は増加してしまいます。

経費の範囲内で目的の精度が達成できるよう、調査の計画を立てなければなりません。

調査対象者の負担、調査員の業務量を考慮して調査事項を定める

実際に調査票に記入するのは調査対象です。

個人を対象とするなら一人ひとりですし、企業を対象とするなら担当者となります。

調査員については人数が限られていますので、業務量も考慮する必要があります。

また調査員が持つ能力も考慮します。あまり高度な能力を要求すると、その基準を満たす調査員の数が少なくなってしまいます。

各段階の事務の内容を事前に検討する

説明、配布、回収、検査、提出、補正、など調査に係る段階は多いです。

調査内容や調査方法によっても変わりますので、事前に各段階で行うべき事務の内容を検討しておくことが必要です。

試験調査の実施を検討する

調査票や調査方法が適切か、必要に応じて試験調査の実施を検討します。

試験調査とは、文字通り試験的に簡易的な調査を行う方法です。

調査方法に問題がある場合は変更を行います。

3.2.8 統計調査の実施系統

統計調査が実施される際、調査対象へ届くまで実に様々な系統があります。

例えば国勢調査は以下のような流れで行われています。

<国勢調査の大規模調査、周期調査>
国
↓
都道府県
↓
市区町村
↓
統計調査員
↓
調査対象

ですが、ほかの統計調査では全く別の経路を辿ることもよくあります。

他の例も見てみましょう。

<学校教員統計調査>
中央府省
↓
都道府県
事業主幹課
↓
教育委員会
↓
調査対象
<農林業センサス>
国の地方支分部局
↓
統計調査員
↓
調査対象

このような調査対象までの経由方法を系統と呼んでいます。

1統計に対して系統は1つというわけではなく、併用されることもあります。

例えば、経済センサスでは、都道府県を経由する調査員調査・国が実施する郵送調査・オンライン調査を併用しています。

3.2.9 統計調査の民間委託

国や地方公共団体(都道府県)が実施する統計調査は、実施の過程の一部を民間の事業者に委託する場合があります。

例えば国から直接調査対象へ郵送調査やオンライン調査を実施する場合、業務の一部を民間事業者に委託する場合があります。

統計調査によっては調査員調査の全てを民間委託する場合もあります。

委託を受けた民間事業者による調査員調査の場合も、調査員は守秘義務が課せられます

3.3 標本設計

統計調査を行う際、必ずしも母集団の全部を調査するわけではありません。

例えば個人が調査対象の場合、全国民を対象として何度も調査するのは、費用や労力を考えて現実的ではありません。

そのため、母集団の一部だけを抽出して調査する場合があります。この調査方法を標本調査といい、一部ではなく全部を調査する方法を全数調査といいます。

標本設計では標本調査の標本をどのように設定するのか、どのように抽出するのかなどを検討します。

3.3.1 全数調査・標本調査

公的統計には全数調査によるものと、標本調査によるものそれぞれ存在しています。

各調査方法にはメリットとデメリットがあります。

<全数調査>・・・調査対象、母集団の全てを調査する

■メリット
・ある時点における母集団の特性を正確に把握できる
・全体を細分化した詳細な区分で集計できる
➡例えば、市区町村、企業、産業小分類など細分化したデータを得られる

■デメリット
・調査の実施、集計にかかる費用と労力が多大になる
・集計に時間がかかる
<標本調査>・・・母集団の一部を抽出して調査する

■メリット
・調査の費用、労力を削減できる
・集計時間を短縮できる
・結果公表の早期化につながる
・調査員の数が少なくて済むため、十分な訓練が可能になり質の高い調査員を確保できる

■デメリット
・母集団の一部を抽出するので、その分誤差が生じる(標本誤差)
・誤差の管理や、推定の手間が発生する

3.3.2 抽出単位・標本抽出枠

標本調査を行う際、母集団を構成する要素を集出するときに用いる単位を抽出単位といいます

抽出単位は抽出の各段階で異なります。

例えば全国の世帯を対象として抽出を行うとき、いきなり世帯を抽出してもよいのですが、まず地域ごとに分けて抽出してもよいかと思います。

「家計調査」では、まず調査対象の"市町村を抽出"します。その中から「国勢調査」の結果に基づく"調査区を抽出"し、そこから"世帯を抽出"していきます。

抽出単位:市区町村

抽出単位:調査区

抽出単位:世帯

抽出単位は、市区町村、調査区、世帯、事業所、法人、学校、農業経営体など様々です。

また、標本抽出を行う際に、ある抽出単位が選ばれる確率を「抽出確率」といいます。

抽出確率は母集団の推定を行う際に用いられます。母集団から一部を抽出しますので、その一部から全部を推定する必要があります。

実務的な話として、定めた抽出単位をもとに調査を行う際、調査のためのリスト、つまり名簿や台帳が必要になります。

この名簿や台帳のことを「標本抽出枠」といいます。標本はサンプルとも言い、標本抽出枠をサンプリングフレームと呼ぶこともあります

3.3.3 標本抽出法

標本抽出法とは、標本を抽出する方法のことで、様々な手法があります。

大きく分けて、無作為抽出有意抽出があります。

無作為抽出とは、抽出単位ごとの抽出確率を用いて標本を抽出する方法です。

有意抽出とは、典型的・代表的と考えられる標本を主観的に抽出する方法です。

標本調査では一部から全体を推定することによる誤差、「標本誤差」が生じます

無作為抽出は、抽出確率に基づき、標本誤差を調査結果から推定し管理することが可能です。

有意抽出では、主観的に抽出しているため抽出確率が明らかではなく、標本誤差の測定や管理はできません

どちらが良い、というものではなく目的に応じて使い分けます。

とはいえ統計調査については無作為抽出が多く使用されます。

有意抽出は試験調査等で調査方法の妥当性を確認する場合などに使用されます。

調査方法の試験なので、推定をするわけではないため主観的に調査対象を選んでも問題ないということです。

また標本サイズを大きくすると標本誤差は小さくなります。

3.3.4 単純無作為抽出法

単純無作為抽出法(たんじゅんむさくいちゅうしゅつほう)とは、どの抽出単位が抽出される確率も等しくなる抽出法です。

例えば100人全員に1から100までの番号を振って、そこからランダムに5人選ぶような考え方です。

一見全てこれで良さそうに見えるのですが、デメリットがあります。

(1)標本が特定の層に偏る可能性

特定の層に偏ると、推定結果も偏ってしまいます。

(2)標本が広範囲に散らばる可能性

標本が広範囲に散らばると何が問題なのかというと、実際の調査を行う際、調査員の移動等の負担が大きくなりすぎることがあります。

これを解決する抽出方法として、層化抽出法多段抽出法系統抽出法などがあります。

必ずしも1つの方法を使用するわけではなく、統計によっては組み合わせて使用することもあります

3.3.5 系統抽出法

系統抽出法とは、抽出単位に一連の番号を付け、無作為に決めた抽出番号の起点から等間隔で抽出する方法です。

3.3.6 層化抽出法

層化抽出法とは、母集団をいくつかの層に分けて各層から標本を抽出する方法です。

標本がどの層からも満遍なく抽出されるので、偶然による標本の偏りを避けることができます

層化抽出法では、効果的な層を設定することが重要です。

具体的には、調査項目が同質なものを同じ層にし、異質なものを異なる層に分けます。

3.3.7 多段抽出法

多段抽出法とは、複数の段階に分けて標本を抽出する方法です。

例えば、100人から抽出する場合、まず10人ずつの10グループに分けて、そこから3グループを選び、選んだ3つの各グループの中から3人ずつ選ぶような方法です。

この場合、100人を母集団、1段目に選んだ3つのグループを1次抽出標本、2段目に選んだ3人を2次抽出標本、と言います。

実際は1段目で調査区を抽出し、2段目で世帯を抽出する形で標本抽出が行われます。

また、2段階ではなく3段階で抽出を行う統計もあります

多段抽出法は、標本がある程度まとまるので調査コストを削減できます

ですがその分誤差が大きくなる可能性があります。

層化抽出法と多段抽出法を組み合わせて使うこともできます。

層化したうえで、多段抽出を行う方法を「層化多段抽出法」と言います。

3.3.8 集落抽出法

集落抽出法とは、1次抽出標本に含まれる対象の全てを調査する方法です。

多段抽出法と似ていますが、1次抽出標本をそのまま全て調査してしまう、という点が異なります。

メリットとして、全て調査するので事前の名簿を作る必要がないということが挙げられます。

この場合の効果はコスト削減になります。

ただし、集落間のばらつきが大きい場合には、結果の精度が低下するデメリットがあります。

3.4 標本調査の実例

統計調査の方法には、調査員を用いる調査員調査やインターネット調査などがあります。

このうち調査員調査については、層化抽出法と多段抽出法を組み合わせた形で行われることが多いです。

各府省の実施する統計調査の一部を、抽出方法とともにご紹介します。

3.4.1 抽出方法/家計調査・・・総務省

総務省が行う「家計調査」では層化抽出法と多段抽出法を組み合わせています。

<家計調査>・・・総務省

■層化多段抽出法

・第1段
全国の市町村を人口規模で層化、全国計168層の各層から1市町村ずつ抽出

・第2段
市町村から調査を行う単位区を無作為に抽出

・第3段
各単位区内の全居住世帯の名簿を作成し、
2人以上の世帯は1単位区から6世帯、
単身世帯は2単位区1世帯を無作為に抽出

参考資料
・経済統計の実際 - 日本統計学会編/東京図書刊
・総務省 統計委員会 HP https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/toukei/index.html
・総務省統計局 HP https://www.stat.go.jp
・総務省 日本標準産業分類 https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/R05index.htm

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                  CIT経営開発事務所 代表
                  井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)

                  IT・事業コンサルタント
                  IT・開発エンジニア
                  行政書士R6合格者未登録

                  大手システム開発会社にてSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。

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