INSIGHT

デジタルガバナンス・コードを要約、概要や目的、実践と5つの柱、中小企業はどうすべきかを解説

2026.01.24

    restore

    2026/1/24 11:54

    • AI

    • 技術

    • DX・効率化

    • 戦略・フレームワーク

    シェア  >

    デジタルガバナンス・コードを要約、概要や目的、実践と5つの柱、中小企業はどうすべきかを解説 スライド画像

    「デジタル技術をどう経営に活かせばいいのかわからない」「DXという言葉は聞くが、具体的に何を評価されるのか」

    こうした悩みを抱える経営者の方は少なくありません。デジタル技術が急速に進化する現代において、企業が生き残り、成長し続けるためには、単なるシステムの導入を超えた「経営のあり方」そのものの変革が求められています。

    今回は、経済産業省が策定したデジタルガバナンス・コード3.0の内容に基づき、その要約から実践方法、この指針をどのように活用してDX認定の取得や企業価値の向上に繋げればよいのか、まで網羅的に解説していきます。

    デジタルガバナンス・コードとは?概要と改訂の背景

    まずはじめに、デジタルガバナンス・コードの基本的な定義、最新版である3.0への改訂の経緯を確認していきましょう。

    企業経営に不可欠なデジタル時代の指針

    デジタルガバナンス・コードは、経済産業省が策定した、デジタル技術による社会変化(DX:デジタルトランスフォーメーション)を踏まえ、企業経営者が実践すべき事項をまとめたものです。単なるITシステムの導入を推奨するものではなく、経営戦略そのものをどうデジタルと融合させ、持続的な企業価値向上につなげるかを説いています。

    ~Tips:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは~
    データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

    なぜ3.0への改訂が必要だったのか

    2024年以降、生成AIの急速な普及や、サイバーセキュリティリスクの高まり、そしてデータ活用の重要性が一段と増しました。これに伴い、デジタルガバナンス・コードは3.0へとアップデートされました。

    最新の3.0では、特に「生成AI等の新技術への対応」や「企業間連携による価値創造(エコシステム)」、そして「サイバーセキュリティの経営課題化」が強く意識されています。これまで以上に経営者がデジタルを「コスト」ではなく「投資・成長の源泉」として捉えることが求められているといえます。

    コーポレートガバナンス・コードとの関係性

    デジタルガバナンス・コードは、上場企業に適用される「コーポレートガバナンス・コード」を補完する役割を持っています。コーポレートガバナンスが「企業を健全に経営するための枠組み」であるのに対し、デジタルガバナンスは「デジタル変革を通じて企業価値を高めるための経営のあり方」に特化しています。機関投資家が企業の将来性を判断する際、このデジタルガバナンスへの取り組み姿勢が重要な評価指標となっているようです。

    デジタルガバナンス・コードを構成する5つの柱

    次に、デジタルガバナンス・コードの核となる5つの柱について、具体的に何を検討し、実行すべきかを詳しくご紹介します。

    デジタルガバナンス・コードは、経営者が対話すべき要素として5つの柱を掲げています。少し見づらいのですが、「1.」「2.」のように番号が振ってある5つの項目です。

    出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」

    ・1. 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
    ・2. DX戦略の策定
    ・3. DX戦略の推進
    ・4. 成果指標の設定・DX戦略の見直し
    ・5. ステークホルダーとの対話

    これらは相互に関連しており、全体として一貫性のある取り組みが必要です。

    1. 経営ビジョン・ビジネスモデルの作成

    デジタル技術による社会・経済の変化を捉え、自社がどのような価値を提供し、どのようなビジネスモデルを目指すのかを明確にします。

    経営者は、生成AIの台頭やデータ経済圏の拡大といった外部環境の変化が、自社の競争優位性にどう影響するかを深く洞察しなければなりません。単なる「IT化」の旗振りではなく、将来の市場で自社が生き残るためのパーパスをデジタルと結びつけて言語化することが求められます。

    2. DX戦略の策定

    ビジョンを実現するための具体的な戦略を設計します。参考として以下の3つの要素を組み合わせた戦略を立てます。

    • 組織・仕組み:迅速な意思決定を可能にする組織デザイン

    • 人材:デジタルリテラシーを持ち、変革を推進できる人材の確保・育成

    • ITシステム・データ活用:将来の変化に柔軟に対応できるIT基盤の構築と、信頼性の高いデータ活用環境の整備

    データの信頼性を担保するための「データガバナンス」についても重要な位置付けを持っています。

    3. DX戦略の推進

    策定した戦略を、確実に実行に移します。経営者自らが先頭に立ち、リソースを適切に配分するとともに、変革に伴うリスクを管理します。サイバーセキュリティ対策の徹底や、AI利用における倫理指針の策定なども含まれています。IT部門に丸投げするのではなく、経営課題としてこれらのリスクと向き合い、推進体制を監督することが重要です。

    4. 成果指標の設定・DX戦略の見直し

    戦略の進捗を定量・定性の両面から測定し軌道修正を行います。

    DXは不確実性が高いため、一度決めた戦略を固定せず、設定したKPIに基づいて定期的に自己評価を行います。 例えば、単に「システムを導入したか」ではなく、「それによって顧客体験がどう向上したか」「どれほどのデータが利活用可能な状態になったか」といった、本質的な成果を見極める指標が必要です。

    ~Tips:KPI(Key Performance Indicator)とは~
    目標の達成度合いを計るための定量的な指標。デジタルガバナンスにおいては、売上などの最終成果だけでなく、変革のスピードやデータの活用度合いを示す指標を設定することが推奨される。

    5. ステークホルダーとの対話

    自社のデジタル変革の取り組み状況を、投資家や顧客、従業員などの利害関係者に透明性高く発信します。

    経営ビジョンから戦略、そしてその成果に至るまでを開示することで、市場からの信頼を獲得し、資金調達の円滑化や優秀な人材の確保に繋げます。これは単なる広報活動ではなく、対話を通じて得たフィードバックを、再び1つ目の柱であるビジョンへ影響させるサイクルの一部と考えて下さい。

    ~Tips:ステークホルダーとは~
    企業活動を行う上で影響を受ける全ての利害関係者のこと。株主、投資家、従業員、顧客、取引先、地域社会などが含まれる。

    データガバナンスの重要性とデジタル庁ガイドラインの統合

    デジタルガバナンス・コードの土台となるデータの扱い方と、デジタル庁が示す最新の指針について、関連的にご紹介したいと思います。

    デジタルガバナンスを実践する上で避けて通れないのが「データガバナンス」です。データの品質が低ければ、どんなに優れたAIや戦略も機能しません。

    攻めのIT投資に不可欠なデータの"信頼性"

    これまでのIT投資は、守りのIT、つまりコスト削減や効率化が中心でしたが、これからは攻めのITとして、ITによる価値創造へシフトする必要があります。そこで重要になるのが、データの信頼性です。

    不正確なデータや、部署ごとにサイロ化したデータは、迅速な経営判断の妨げとなります。デジタルガバナンス・コードでは、データを企業の重要な資産と位置づけ、その整合性や安全性を確保することを求めています。

    データガバナンス・ガイダンスが求める経営者の役割

    デジタル庁が策定した「データガバナンス・ガイダンス」では、データ活用を現場任せにせず、経営トップが「データの力で会社をどう変えるか」という意志を示すことが強調されています。

    経営者がデータの重要性を理解し、データ活用を阻む組織の壁を取り除くことこそが、デジタルガバナンスの実践そのものであるとも言えます。

    データのサイロ化を防ぐための組織横断的アプローチ

    多くの企業では、営業部、製造部、総務部でデータがバラバラに管理されています。これを統合し、全社で活用できるデータ基盤を構築することは容易ではありません。

    成功している企業は、小さな成功体験を積み重ねて地道に実践するか、データ基盤を構築する新たな部署、あるいは大規模プロジェクトを立ち上げるか、のどちらかが多い印象です。まずは特定のプロジェクトでデータを統合して成果を出し、その価値を全社に広めていくアプローチが、ガバナンスを浸透させる近道です。

    中小企業におけるデジタルガバナンス・コードの実践と課題解決

    リソースの限られた中小企業が、どのようにデジタルガバナンスを自社の経営に取り入れればよいのか、具体的なステップと解決策を確認してみましょう。

    デジタルガバナンス・コードは、大手企業だけのものではありません。むしろ、変化に柔軟な中小企業こそ、この指針を活用して大きな飛躍を遂げるチャンスがあります。

    中小企業が直面する課題、リソース・人材・危機感

    多くの中小企業に共通した課題があります。

    1. リソースの壁:投資予算が限られている

    2. 人材の壁:ITに詳しい社員がいない、採用できない

    3. 危機感の壁:現状のビジネスで手一杯で、将来のデジタル化まで頭が回らない

    これらの課題を解決するには、最初から完璧なガバナンスを目指すのではなく、自社の状況に合わせた小規模なデジタル化が必要です。

    中小企業向け デジタルガバナンスコード実践の手引き を活用する

    経済産業省が公開している「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」は、リソースの少ない企業にとって非常に有用な資料です。ここでは「まずは紙の情報をデジタル化する(デジタイゼーション)」といった初歩的なステップから、ビジネスモデルの変革へと段階的に進むことが推奨されています。

    図表1:デジタルガバナンス・コード 実践の手引き 目次

    出典:経済産業省-デジタルガバナンス・コード 実践の手引き 2.1 より一部抜粋
    ※一部赤文字のみCIT経営開発にて追記

    そもそもDXとは何か、からはじまり、中堅・中小企業等におけるDX取組事例集まで公開されています。事例集では従業員数20~400名規模の企業による、様々なDX事例が紹介されています。自社に近い業種、業態の成功事例を確認してみましょう。

    最新の実践の手引き2.1には要約版も用意されています。こちらは見た目がよくある政府の詰め込みスライド式なのですが、1スライド・1事例とまとまっていますので、自社に近い業種の事例だけピックアップして、資料として社内に展開してもよいでしょう。

    図表2:デジタルガバナンス・コード 実践事例

    出典:経済産業省-デジタルガバナンス・コード 実践の手引き 2.1 要約版 より一部抜粋

    この資料の見方について、特に説明がありませんでしたので、以下説明を作成してみました。社内で共有する際はぜひご活用ください。

    図表3:デジタルガバナンス・コード 実践事例の見方

    -経済産業省-デジタルガバナンス・コード 実践の手引き 2.1 要約版 より一部抜粋しCIT経営開発が作成
    ※上記資料を用いたことによりいかなる損害が発生したとしても当事務所及び執筆者、監修者は一切責任を負いかねますので、予めご了承ください。

    ~Tips:デジタイゼーションとは~
    アナログ・物理データをデジタルデータ化すること。例えば、紙の伝票をデータ入力したり、書類をスキャンしてPDF化したりすることを指す。

    DX認定制度の活用メリットと具体的な申請プロセス

    デジタルガバナンス・コードへの取り組みを公的に証明する「DX認定制度」の概要と、取得することによる実利的なメリットをご紹介します。

    デジタルガバナンス・コード準拠の証明「DX認定」とは

    デジタルガバナンス・コードの基本事項を実践している企業は、国から「DX認定」を受けることができます。

    DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、経済産業省が定めるデジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応している企業を国が認定する制度です。

    認定を受けることは、自社が「デジタル変革の準備が整っている(DX-Readyといいます)」状態であることを公に証明することになります。

    税制優遇や公的融資における優遇措置の獲得

    DX認定を取得すると、単にイメージが良くなるだけでなく、実利的なメリットも享受できます。

    • 税制優遇:DX投資促進税制などの適用を受けるための要件となる場合があります。

    • 金融優遇:日本政策金融公庫等による低利融資制度(DX認定事業者向け)の対象となります。

    • 採用・ブランド力:認定ロゴマークを名刺やHPに掲載でき、IT人材の採用や新規取引において有利に働きます。

    特に資金調達を検討している中小企業にとって、DX認定は強力な武器となります。

    認定取得に向けた経営者のコミットメント

    DX認定の申請において最も重要なのは、書類の作成技術もそうですが、経営者が本気でDXに取り組む意志があるか、も重要です。申請書類には、経営ビジョンや戦略を経営者自身の言葉で記述する項目もあります。

    まずはデジタルガバナンス・コードを読み解き、自社の現状を棚卸しすることからスタートしてみましょう。

    よくある質問(FAQ)

    デジタルガバナンス・コードの導入や実践に関して、よくある質問への回答をご用意しました。

    Q:デジタルガバナンス・コードに取り組まないと、罰則などはありますか?

    A. 法律ではありませんので、直接的な罰則はありません。

    しかし、上場企業においてはコーポレートガバナンス・コードとの兼ね合いで、説明責任が求められます。また、非上場の中小企業であっても、取り組みを怠ることで、デジタル化の遅れによる競争力低下や融資・取引の機会損失という形でのデメリットが生じる可能性はあります。積極的に取り組むことをおすすめします。

    Q:ITに詳しい社員がいませんが、ガバナンスの構築は可能ですか?

    A. 可能です。デジタルガバナンス・コードが求めているのは「技術的な専門知識」ではなく「経営判断」です。

    技術的な部分は外部の専門家やパートナー企業を活用すれば問題ありません。大切なのは、経営者がビジョンを示し、組織を動かすことです。

    Q:DX認定を受けるまでにどれくらいの期間が必要ですか?

    A. 企業の準備状況によりますが、ビジョン策定から申請、認定まで一般的に3ヶ月から半年程度かかるケースが多いようです。

    まず現状をデジタルガバナンス・コードに照らし合わせて自己診断し、足りない要素、例えば戦略の明文化やKPIの設定など、を補うプロセスが必要になります。

    Q:デジタルガバナンス・コード3.0で追加された「生成AI」への対応は必須ですか?

    A. 全ての企業に必須ではありませんが、自社のビジネスに生成AIがどのような影響を与えるか、を検討することは強く推奨されています。

    リスク管理(特に機密情報の流出防止など)の観点からも、利用ルールを定めるなどの最低限の対応はガバナンスの一環として求められるようになっています。

    デジタルガバナンス・コードは守りではなく攻め

    今回は、デジタルガバナンス・コードの概要から5つの柱、中小企業の実践方法について解説してきました。

    デジタル変革は一日にして成らず、継続的な取り組みが必要です。まずは、自社の経営ビジョンの中にデジタルやITをどう位置づけるか、経営会議の議題に上げるところからはじめてみてはいかがでしょうか。

    次の一歩として、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」の原文を一読し、自社の現状と照らし合わせることをおすすめいたします。

    当記事の執筆者

    CIT経営開発事務所 代表
    井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)

    IT・事業コンサルタント
    IT・開発エンジニア
    行政書士R6合格者未登録

    大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。