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バウンダリースパナーとは。語源や事例、デメリットをわかりやすく解説
2026.06.28
2026/6/28 06:05
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ビジネス環境の変化が激しく、予測困難な現代において、企業が持続的に成長するためには「イノベーション」や「スピード感のある意思決定」が欠かせません。しかし、多くの企業が直面するのが、組織の肥大化に伴う「縦割りの壁(セクショナリズム)」という課題です。
優れた技術や画期的なアイデアがあっても、部門間の連携がスムーズにいかなければ、それは宝の持ち腐れとなってしまいます。
こうした組織の硬直化を防ぎ、部門や企業の垣根を越えてシナジーを生み出すキーパーソンとして、近年大きな注目を集めているのが「バウンダリースパナー(Boundary Spanner)」という存在です。
本記事では、組織の活性化と成長を牽引するバウンダリースパナーの本質とその重要性について、分かりやすく解説していきます。
[[筆者|バウンダリースパナーという言葉は、「バウンダリー」も「スパナー」も聞きなれないためイメージがつかみづらいですよね、解説します]]
- バウンダリースパナーとはどのような存在か
- 言葉の定義と基本的な意味合い
- バウンダリースパナーの語源と成り立ち
- なぜバウンダリースパナーが必要か
- 部門間における壁の発生
- 外部環境の変化とイノベーションの必要性
- バウンダリースパナーの具体的な事例
- 営業部門と開発部門を繋ぐ調整役
- 経営層と現場社員の認識のズレを埋める役割
- バウンダリースパナーが組織にもたらす主なメリット
- 情報伝達の円滑化と意思決定の迅速化
- 異なる価値観の融合による新しいアイデアの創出
- バウンダリースパナーを配置するデメリット
- 本人の業務負担や精神的なストレスの増加
- 属人化リスク
- デメリットを解消しバウンダリースパナーを支援する環境づくり
- 評価制度の見直しと適切なフィードバック
- 組織全体での情報共有体制の構築
- 自社でバウンダリースパナーを発掘・育成する
- 境界を越える越境学習の機会提供
- コミュニケーション能力を高める研修の実施
- 組織戦略にバウンダリースパナーを組み込むための視点
- 採用段階から適性を見極める工夫
- 組織図にとらわれない柔軟なチーム編成
- 経営についてコチラもおすすめです【関連記事】
バウンダリースパナーとはどのような存在か
組織の成長において新しい概念を理解することが重要です。まずはじめにバウンダリースパナーの具体的な意味や背景を確認してみましょう。
言葉の定義と基本的な意味合い
バウンダリースパナーとは、組織内外の境界を越えて情報や人をつなぐ役割を担う人材のことです。バウンダリーとは境界線のことであり、スパナーとはつなぐ人という意味を持ちます。
バウンダリースパナーは異なる部署や外部組織との間に生じる認識のズレを調整する働きを担います。特定の部署に所属しながらも他部署の言語や文化を理解して双方が協力しやすい環境を構築する役割があります。
具体的な場面として、専門的な知識を持つ開発部門と顧客の声を聴く営業部門の間で生じる意見の対立を仲裁する場面が考えられます。このとき、バウンダリースパナーは開発部門が追求する技術的な理想と営業部門が求める市場のニーズを擦り合わせるような活動を行います。
両者の意見を中立的な立場で聞き入れながらプロジェクト全体が最適に進行するような解決策を提示する必要があり、組織全体の利益を最優先に考えて各部門の利害関係を調整する非常に高度なコミュニケーション能力が要求されます。
バウンダリースパナーは特定の役職名ではなく一種の機能や役割として捉えられています。
[[筆者|現場のリーダー層や中堅社員が自然とこの役割を担っているケースが多いですね]]
バウンダリースパナーの語源と成り立ち
バウンダリースパナーの語源は英語の「Boundary Spanner」に由来しています。Boundaryは境界を意味しSpannerはつなぐものという意味を持っています。
組織論や経営学の研究分野において古くから議論されてきた概念だと言われています。組織が巨大化して官僚主義的な傾向が強まる中で部門間の情報の分断を防ぐための研究が進められてきました。
1970年代頃からイノベーションを促進する要因として学術的に注目され始めたという説があります。
[[筆者|イノベーションとは新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を創造することで、プロダクトイノベーションやプロセスイノベーションなど種類があります]]
外部の新しい情報を組織内に取り込むためには組織の境界に立つ人物の存在が不可欠だという認識が広まりました。経営環境が複雑化する現代においてその重要性が再認識されているのだと思います。
なぜバウンダリースパナーが必要か

次に、現代の企業経営において境界を越える人材が求められる背景をご紹介していきます。組織の内部や外部で起きている変化について確認してみましょう。
部門間における壁の発生
企業規模が拡大する過程で業務の専門化が進み各部門が独自の目標を追求するようになります。サイロ化と呼ばれる組織が孤立してしまう状態が発生しやすくなる時期が訪れます。
サイロ化とは各部門が外部との連携を絶ち閉鎖的になってしまう現象のことです。各部門が自部門の利益や目標達成のみを優先するようになり全社的な最適化が失われる危険性があります。
営業部門は売上目標の達成を最優先し開発部門は製品の品質向上に専念する傾向があります。両者の目標が相反する場面でコミュニケーションが不足すると組織全体の進捗が停滞する事態を招きます。
[[筆者|とはいえ、日々の業務に追われる中で他部署の状況を把握する余裕が失われていくことが多いと思います]]
部門間で互いの業務内容や専門用語を理解できないことがコミュニケーションの障害となる状況も多く見受けられます。
このような部門間の壁を取り払い共通の言語で対話できる人材がバウンダリースパナーであり、バウンダリースパナーが間に入ることで互いの主張を翻訳し合い建設的な議論ができる環境が整います。
外部環境の変化とイノベーションの必要性
市場のニーズが多様化し技術の進化が加速する現代において単一の専門知識だけでは課題解決が難しくなっています。外部の新しい情報をいち早く組織内に取り入れ既存の知識と組み合わせる活動が求められます。
具体的には、顧客の声を直接聞く最前線の社員が外部環境の変化を最も敏感に察知していると考えられます。その貴重な一次情報を製品開発や経営戦略の決定プロセスに適切に反映させることが重要です。
バウンダリースパナーは外部の顧客やパートナー企業との接点として機能し有益な情報を社内に持ち込みます。外部の視点を取り入れることで組織内に蔓延する固定観念を打破するきっかけを作ります。
新しい製品やサービスを生み出すイノベーションの過程では異なる領域の知識が交差することが前提となります。この時、異なる専門性を持つ人材同士を結びつける中心的な役割をバウンダリースパナーが担います。
バウンダリースパナーの具体的な事例

つづいて、実際のビジネスの現場でバウンダリースパナーがどのように機能しているのか具体的な事例をご紹介していきます。組織の課題を解決するバウンダリースパナーの動きを確認してみましょう。
営業部門と開発部門を繋ぐ調整役
製品開発の現場では市場のニーズと技術的な制約の間で意見の衝突が起こりがちです。営業部門はお客様の細かい要望をすべて実現したいと考えますが開発部門は納期やコストの観点から難色を示します。
こうした状況においてプロダクトマネージャーのような職務を担う人物がバウンダリースパナーとして活躍します。両方の部門の言語を理解し技術的な難易度と市場での価値を天秤にかけながら最適な妥協点を探ります。
バウンダリースパナーは営業担当者には技術的な制約の背景を分かりやすく説明し顧客への代替案の提案を支援します。開発担当者にはお客様がその機能を求める真の理由を伝え開発のモチベーションを高める働きかけを行います。
単なる伝達役になるのではなく独自の視点を交えて新しい解決策を提示する点がバウンダリースパナーの特徴です。双方が納得できる共通の目標を再設定することで対立関係を協力関係へと変容させます。
このような活動を通じて開発された製品は市場のニーズと技術力のバランスが取れた優れたものになります。
経営層と現場社員の認識のズレを埋める役割
経営陣が描く理想的な戦略と現場の社員が感じる現実の間には大きな隔たりが生じることがあります。トップダウンで下ろされた目標が現場の実態に合わず社員の不満が蓄積するケースが少なくありません。
ミドルマネジメント層である部門長や課長がバウンダリースパナーとして経営と現場の境界に立つことが考えられるでしょう。経営戦略の意図を現場の社員が理解できる言葉に噛み砕いて伝える翻訳者としての役割を担います。
[[筆者|このように考えると、バウンダリースパナーは日本におけるマネジメント層の必須能力と言えるかもしれません]]
現場が抱えている人材不足や業務過多といったリアルな課題を経営陣に正しく報告する義務も負っています。経営層が現場の状況を正しく把握することでより現実的で効果的な戦略の修正が可能になります。
経営と現場の双方向のコミュニケーションを円滑にすることで組織全体のベクトルを合わせます。現場の意見が経営に反映されているという実感が社員のモチベーション向上に直結します。
この役割を効果的に果たすためには経営的視点と現場感覚の両方をバランス良く持ち合わせている必要があります。上下の階層を繋ぐバウンダリースパナーの存在が組織の実行力を根底から支えているんですね。
バウンダリースパナーが組織にもたらす主なメリット

それでは、バウンダリースパナーを組織に配置することでどのような恩恵が得られるのかをご説明していきます。組織全体のパフォーマンスに与える影響を確認してみましょう。
情報伝達の円滑化と意思決定の迅速化
バウンダリースパナーが存在することで部署間や階層間の情報伝達スピードが格段に向上します。情報の滞留を防ぎ必要な情報が必要な部署へ迅速に届けられる仕組みが構築されます。
有益な情報が組織の境界に阻まれることなく経営陣や関連部署へ適切にエスカレーションされる体制が整うことで、各部門が独自に持っている専門知識や顧客情報が組織全体で共有されやすくなります。意思決定に必要な情報がタイムリーに集まるため経営層の判断スピードも劇的に速くなります。
[[筆者|迅速な意思決定は企業の競争優位性を保つため、非常に重要です]]
現場レベルでも他部署への確認作業や調整に要する時間が大幅に削減される効果が期待できます。無駄な社内調整が減ることで社員が本来の付加価値を生み出す業務に集中できるようになります。
異なる価値観の融合による新しいアイデアの創出
同質性の高い集団の中では既存の枠組みを超えるような斬新なアイデアは生まれにくい傾向がありますが、バウンダリースパナーが異なる背景を持つ人々を結びつけることで多様な価値観が交差する場が生まれます。
外部の最新技術や異業種の成功事例を社内の既存事業に掛け合わせる相乗効果を意図的に引き起こします。思いもよらない視点からの提案が硬直化した組織の活性化につながるきっかけとなります。
営業部門が捉えた顧客の潜在的な悩みを開発部門の最先端の技術で解決するといったコラボレーションの実現は、バウンダリースパナーが適切に機能した結果であることも多いです。
イノベーションの可能性は組織の境界線や異分野との接点に存在していることが多いと考えられています。その境界線上で情報を編集し独自の価値に変換する役割を担うのもバウンダリースパナーです。
バウンダリースパナーを配置するデメリット
それでは、バウンダリースパナー本人が抱える負担や組織的な課題について確認してみましょう。本人にかかる負荷や組織の体制に関する問題点を洗い出していきます。
本人の業務負担や精神的なストレスの増加
バウンダリースパナーとして活動する人材には極めて高い業務負荷がかかることが懸念されます。バウンダリースパナーは自身の本来の所属部門での業務をこなしながら他部門との調整業務を並行して行うことになります。
異なる利害関係を持つ部門の間に立つため双方からの不満や要望を直接受け止める立場になります。対立する意見をまとめる過程で精神的なストレスを抱え込みやすい過酷な役割だと言えます。
また、調整業務は成果が目に見えにくく費やした時間と労力に対して正当に評価されにくいという特徴があります。明確な権限を持たないまま責任だけが重くなり本人が疲弊してしまうリスクが存在します。
[[筆者|組織全体のために奔走しているにもかかわらず周囲からは何をしているのか分からないと誤解されることもあります]]
バーンアウトと呼ばれる燃え尽き症候群に陥り貴重な人材が離職してしまう事態は避けるべきです。バーンアウトとは心身の疲労により突然仕事への意欲を失ってしまう状態のことです。このような状態を防ぐためには周囲の理解と組織的なサポート体制が欠かせない要素となります。
属人化リスク
バウンダリースパナーの役割は個人の高いコミュニケーション能力や人間関係に依存しがちです。特定の優秀な人材に調整業務が集中しその人がいなければ業務が回らなくなる属人化のリスクが生じます。
属人化とは特定の業務の手順や状況をその担当者しか把握していない状態のことです。その人物が異動や退職などで不在になった途端に部門間の連携が完全にストップしてしまう危険性をはらんでいます。
情報の流れが特定の個人を中心としているためその個人の処理能力が組織全体の処理の遅れを招く原因となる可能性があります。個人が抱え込んでいる暗黙知を組織の形式知として共有していく仕組みづくりが急務となります。
[[筆者|暗黙知とは個人の経験や勘に基づく言語化されていない知識やノウハウのことです]]
この暗黙知を周囲が理解できる形に変換して後進の育成に役立てる視点が、バウンダリースパナーに求められます。
一部の突出した能力を持つ個人に頼る組織構造は長期的な観点で見ると非常に脆弱です。役割を複数の社員に分散させたりローテーションを組んだりする工夫が必要になってきます。
デメリットを解消しバウンダリースパナーを支援する環境づくり
次に、バウンダリースパナーが抱える課題を解決するための組織的なアプローチをご紹介していきます。彼らが最大限に能力を発揮できる環境整備について確認してみましょう。
評価制度の見直しと適切なフィードバック
調整業務や橋渡しという見えにくい貢献を正当に評価する新しい指標を導入することが重要です。単なる売上金額や製品開発数といった定量的な目標だけでは彼らの真の価値を測ることは困難です。
他部署からの感謝の声を評価に反映させる360度評価のような仕組みが有効だと考えられます。
[[筆者|360度評価とは上司だけでなく同僚や他部署のメンバーからも評価を受ける制度のことです]]
組織全体の利益にどれだけ貢献したかという観点から定性的な評価基準を明確に設定する必要があります。本人が取り組んでいる調整業務の意義を上司が深く理解し定期的にフィードバックを行う体制が必要です。
精神的な負担を軽減するために定期的な面談を実施して悩みを共有できる場を提供することも効果的です。上層部が彼らの活動を公式に承認し組織にとって重要な役割であることを社内全体に発信していくとよいでしょう。
正当な評価と精神的なサポートが一体として機能することでバウンダリースパナーは安心して業務に取り組むことができます。組織からの期待と承認が彼らのモチベーションを維持する最大の原動力になります。
組織全体での情報共有体制の構築
バウンダリースパナー個人の能力に依存しすぎない組織的な情報連携の仕組みを並行して構築していく必要があります。ITツールを活用して各部門の目標や進捗状況をリアルタイムで共有できるプラットフォームの導入が考えられます。
誰でも簡単に他部署の情報にアクセスできる環境を整えることで情報の非対称性を解消していきます。個人の頭の中にある情報を全社的なナレッジベースに蓄積し共有する習慣を定着させることが大切です。
ナレッジベースとは組織内の知識や情報を集約して検索可能にしたデータベースのことです。日常業務の中で発生する小さな調整事項はツール上で完結させるルールを設けることで個人の負担を軽減します。
ナッレジベースを構築するにはナレッジマネジメントが重要になります。ナレッジマネジメントについては以下に詳しくまとめています。
全社的な情報共有が進むと、新たなバウンダリースパナーが自然発生しやすい環境が形成されます。情報の透明性が高まることで部門間の相互理解が深まり自発的な協力関係が生まれやすくなるでしょう。
自社でバウンダリースパナーを発掘・育成する
つづいて、次世代のバウンダリースパナーを組織内でどのように育てていくべきかをご紹介していきます。具体的な育成手法や人材開発の視点を確認してみましょう。
境界を越える越境学習の機会提供
社員に自部署の枠を越えた経験を積ませる越境学習の機会を意図的に提供することが有効です。越境学習とは所属する組織やコミュニティの境界を越えて新しい価値観や知識を学ぶ手法のことです。
他部署への短期的な留学制度や社内副業制度などを導入して異なる職務を体験させることが考えられます。異なる文化や専門用語に直接触れることで他部門の考え方や業務の苦労を深く理解できるようになります。
外部の企業と共同で行うプロジェクトに若手社員を抜擢することも素晴らしい育成機会となります。社外の優秀な人材と交流することで自社の常識が世間の非常識かもしれないという客観的な視点を獲得します。
こうした経験を通じて多様な価値観を受け入れる柔軟性や、異なる言語を翻訳する能力が磨かれます。越境経験を積んだ社員が元の部署に戻ることでその部署全体に新たな視点を提供する効果も期待できます。
挑戦を歓迎し失敗を許容する組織風土がなければ社員は境界を越える一歩を踏み出すことができません。経営層が率先して越境学習の重要性を発信し挑戦する社員を全力で支援する姿勢を示すことが求められます。
[[筆者|もちろん、挑戦を推奨するのであれば失敗もある程度は許容する必要があります。失敗を非難すると逆効果になります]]
コミュニケーション能力を高める研修の実施
バウンダリースパナーに必要な高度な対話能力やファシリテーションスキルを体系的に学ぶ研修を実施する方法があります。ファシリテーションとは会議や議論を円滑に進行し参加者の意見を引き出す技術のことです。
自分とは異なる意見に耳を傾け共感を示すアクティブリスニングのスキルは調整業務の基礎となります。
[[筆者|アクティブリスニングとは相手の言葉の背景にある感情や意図まで深く理解しようとする聴く姿勢のことです]]
対立する意見の中から両者が納得できる第三の案を生み出すコンフリクトマネジメントの手法も習得すべきでしょう。コンフリクトマネジメントとは組織内の衝突や対立を建設的な方向に導き問題解決を図る手法のことです。
座学だけでなく実際の職場で発生しうる対立場面を想定したロールプレイング演習を取り入れるとより効果的です。客観的なフィードバックを繰り返し受けることで自身のコミュニケーションの癖に気づき改善を図ることができます。
専門知識の習得と同じくらい対人関係スキルの向上に投資することが将来の組織の強さを決定づけます。
組織戦略にバウンダリースパナーを組み込むための視点
それでは、経営的な観点からどのように組織全体をデザインしていくべきかをご紹介していきます。バウンダリースパナーが活躍しやすい組織構造のあり方について確認してみましょう。
採用段階から適性を見極める工夫
中途採用や新卒採用の段階から境界を越える資質を持った人材を見極めて採用することが戦略的な第一歩となります。専門的なスキルだけでなく多様な意見を尊重できる素直さや共感力に焦点を当てた選考プロセスを設計します。
面接の中で過去に立場の異なる人たちとどのように協力して困難を乗り越えたかというエピソードを深掘りします。自分とは合わない価値観を持つ人物とどのようにコミュニケーションを取るかといった具体的な質問を投げかけます。
候補者が特定の専門分野に固執せず周辺領域にも広く興味を持っているかどうかも重要な判断基準となります。T型人材と呼ばれる深い専門知識と幅広い好奇心を併せ持つ人材がバウンダリースパナーとしての適性を備えています。
T型人材とは特定の分野を極めつつも他の様々な領域についても幅広い知見を持っている人材のことです。採用後の配属においても複数の部署を経験させるジョブローテーションを前提としたキャリアパスを提示します。
[[筆者|T型人材や、さらに2つの専門を持つπ型人材は典型的なイノベーターの素質を備えた人材だと言われています]]
多様な経験を歓迎する人材を採用することで将来的に組織の中心的な役割となる重要な人材プールを構築できます。採用戦略と育成戦略を連動させることで組織全体の柔軟性と適応力を段階的に高めていくことが可能になります。
組織図にとらわれない柔軟なチーム編成
固定化された縦割りの組織図を維持したままではバウンダリースパナーが活躍する余地が限られてしまいます。バウンダリースパナーを有効に機能させるには、プロジェクトごとに必要な専門家を集めて機動的にチームを編成するクロスファンクショナルな組織運営がオススメです。
クロスファンクショナルチームとは部署や部門の壁を越えて横断的にメンバーを集めた特別チームのことです。このような流動的なチーム環境の中でこそ異なる知識を統合するバウンダリースパナーの能力が最大限に発揮されます。
経営トップ自らが部門間の壁をなくすという強い意志を示し評価制度や業務プロセスを抜本的に改革していく覚悟が必要です。部分最適に陥りがちな現場の視点を全社最適の視点へと引き上げるようなトップダウンのメッセージ発信が不可欠です。
バウンダリースパナーという存在はこれからの不確実な時代を企業が生き抜くための重要な経営資源だと言えます。彼らの活躍を支援する組織文化を地道に醸成していくことが長期的な企業の成長を確実なものにしていくことでしょう。
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当記事の執筆者
CIT経営開発事務所 代表
井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)
IT・事業コンサルタント
IT・開発エンジニア
行政書士R6合格者未登録
大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。


