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200人が考えるAIに代替されない人間にしかできないこととは。調査研究
2026.07.26
2026/7/26 11:48
AI
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AIの技術革新が進む中で、多くのビジネスパーソンが今後の働き方について課題を感じているのではないでしょうか。また、業務効率化を進める一方で、組織内のコミュニケーションや人材育成のあり方についてお悩みの方も多いと思います。
さて、今回は当事務所が200名を対象に実施した、「AIに代替されない人の価値に関するアンケート調査」の結果をもとに、人間とAIの違いを詳しく分析していきます。
AIに仕事奪われるのではないかといった懸念や、技術的特異点と呼ばれるシンギュラリティの到来といった話題についても触れながら、私たちが今後どのようにAIと向き合い、組織の成長につなげていくべきかを、調査結果から紐解いていきます。
それでは、具体的な調査結果やそこから見えてくる示唆について、詳しく確認してみましょう。
今回分析に活用したデータは、2025年10月22日から2025年11月04日までに行った、「日本社会における人々(20〜59歳)のコミュニケーション意識に関する調査(3~5分程度)」の調査結果です。有効回答数は255件となっています。
当記事でご紹介する内容以外の回答者情報も集計しており、その研究結果はプレプリントとして公開しています。もしご興味があればご覧ください▼
CIT経営開発|AI時代の組織コミュニケーションと人間的スキルに関する実証研究
※回答者情報は一部を伏せ、個人情報については公開しておりません。
- AI技術の進化と人間の役割
- AIが得意とする定型業務と効率化
- 「人間にしかできないこと」の定義
- シンギュラリティに関する一般論
- アンケートから見えた人の価値
- 感情の機微と温度感を伴う共感力
- 表情や声色などの非言語情報
- その場の空気感と臨機応変な対応
- 仕事におけるAI導入の現状
- 情報処理の正確性とAIの限界
- 創造的な業務と新しい価値の提供
- 責任を伴う最終判断と意思決定
- ビジネスサイドの悩みと解決
- 効率化とコミュニケーションのバランス
- 人間関係の構築と心理的安全性の確保
- 従業員のモチベーション維持
- AIに仕事奪われる懸念への対策
- 自らの付加価値を高める方法
- 雑談やアイスブレイクが持つ効果
- 共通の経験を通じた信頼の向上
- AIと人が共存する組織づくり
- AIをツールとして使いこなす視点
- 人間同士の対話がもたらす化学反応
- 人間にしかできないことを磨く組織風土
- DXについてコチラもおすすめです【関連記事】
AI技術の進化と人間の役割
調査結果に入るまえに、まず前提知識について確認しておきましょう。
はじめに、AIが得意とする領域と、人間が担うべき役割の違いについて詳しく整理します。
AIが得意とする定型業務と効率化
まず、AIが持つ圧倒的な情報処理能力とその強みについて確認しましょう。
AIは膨大なデータを瞬時に処理し、論理的な回答を導き出したり、資料作成や情報収集といった定型業務を迅速に行ったりすることに長けています。
そして、人間が明確な指示であるプロンプト(AIに対して出す命令や質問のことです)を与えることで、作業の時間を大幅に短縮することが可能になりました。また、アンケートの調査回答にもあるように、ビジネスにおける企画書の作成やアイデア出しの補助としてAIを活用することで、業務の効率化は格段に進んでいます。
しかし、AIが吐き出す情報は完璧なものではなく、およそ60点から70点程度の仕上がりになることが多いようです。ですので、不足している情報を精査して完成度を80点や100点に高める修正作業は、人間の役割として残り続ける可能性はあるかもしれません。
「人間にしかできないこと」の定義
それではここからは調査結果を元にして考えていきます。
そもそも「人間にしかできないこと」とは一体どのようなことなのかを考え、定義してみましょう。
アンケート結果から見えてくるのは、人間はあいまいな感情やその場の空気感を感じ取り、相手に寄り添うことができるという点です。
実際にどんな回答があったか見てみましょう。
■質問
10. (自由記述)AIに代替されない「人の価値」を、コミュニケーションの観点から自由にご記入ください。(具体的なエピソードがあればぜひ)■回答(一部)
【st198****さん|男性|40代前半】
・人の言葉には魂(感情)が宿ると言います。温かみや怒り、悲しみや喜びなど、これらの感情は人が直接発した言葉にしか宿ることはありません。たとえば「おはよう」という言葉を人間が発した場合と、AIによる自動音声で発した場合とでは感じ方がまるで違うと思います。人が発した場合は思いやりなどが感じられますが、AIの場合は淡々とした冷めた口調に聞こえなくもありません。AIは日に日に進歩しており、いつかは人間の考えが及ばない領域まで発展する可能性があります。テクノロジーの進歩は人間社会にとってはプラスとなるはずですが、やはりAIには補えない「人間らしさ」というものを大切にしていきたいと考えています。【mug****さん|女性|30代後半】
・人の声や表情が生み出す、温度感や空気感みたいなものはAIで代替できない人の価値だと思う【yun****さん|女性|40代前半】
・人の表情一つで悲しくなったり、幸せになったりする。それがマイナスにもプラスにも働くのが人であって、AIはその揺れ幅がない。揺れ幅があると化学反応が起きて、新たな成長に繋がる。化学反応を起こすにはコミュニケーションが必要。人の価値はそこにあると思います。【s..****さん|女性|20代後半】
・今、現在の気持ちや思いに共感するだけではなく、過去に遡って状況を整理して、相手に寄り添うことができるのは人間だからだと感じます。【MT2****さん|男性|20代前半】
・AIの応答は人間のような温かみを感じられないため、ただ答えを返してほしいのではなく、人との対応が欲しい営業や来客対応の付き合い方は人の価値が現れやすいと感じる。
たとえば、人間同士の会話においては、言葉の裏に隠された微妙なニュアンスや、相手の表情の変化を読み取って対応を変えることが日常的に行われています。
一方で、AIは学習したデータに基づいた一般的な回答を提示することはできても、個人の感情の揺れ幅や、言葉にできない思いまでを完全に理解することは困難でしょう。
だからこそ、相手の気持ちを察して言葉を選ぶような温かみのあるやり取りに、人の価値が存在していると言えます。人間が発する「おはよう」という何気ない挨拶に宿る思いやりは、自動音声には出せない魅力なのでしょう。
シンギュラリティに関する一般論
シンギュラリティについても確認しておきましょう。
シンギュラリティとは、人工知能が人間の知能を超える転換点、いわゆる技術的特異点のことです。
世間では、シンギュラリティが到来することで人間の仕事がなくなってしまうのではないかという不安が語られることがあります。しかし、知能や情報処理能力においてAIが人間を上回ったとしても、人間が持つ感情や思いやり、そして人とのつながりまでを機械が丸ごと引き受けるわけではありません。
知能の高さと感情の豊かさは別の問題であり、人間関係の構築や信頼の醸成は機械には代われない領域です。そうした背景があるからこそ、私たちはAIの能力を正しく理解し、人間同士の心を通い合わせるコミュニケーションに焦点を当てていくべきでしょう。
アンケートから見えた人の価値
それでは、実際に200名の方々がどのような点に人の存在意義を感じているのか、アンケートの具体的な回答をもとに、さらに掘り下げていきます。ぜひ皆様の職場環境に当てはめながら読んでみてください。
感情の機微と温度感を伴う共感力
はじめに、数多くの回答者が挙げたのが、感情の機微と温度感を伴う共感力です。
ある回答者は、兄弟が落ち込んでいるときに特別な言葉をかけず、ただ隣でコーヒーを一緒に飲んだだけで笑顔が戻ったというエピソードを寄せてくれました。
【Aki****さん|女性|50代前半】
・AIは膨大なデータをもとに言葉を学び、人の感情に寄り添うような表現も生み出せるようになってきています。そうした進化を見ていると、「人だけが意味を生み出す存在」とは言い切れないと感じます。それでも、人と人とのコミュニケーションには、言葉を超えた「共にいる感覚」や「一瞬の空気の共有」があるように思います。AIは相手の感情を分析したり予測したりはできますが、その場に流れる緊張感や沈黙の意味を“体感”することはまだ難しいでしょう。以前、兄弟が落ち込んでいるときに、特別な言葉をかけたわけではなく、ただ隣で一緒にコーヒーを飲んだだけで少し笑顔が戻ったことがありました。その瞬間、「言葉にしない共感」が人の強みなのかもしれないと感じました。AIも人の感情を理解しようとする存在にはなれるけれど、「同じ時間を生きる感覚」を共有できるのは、今のところ人間ならではの価値だと思います。
また、AIに悩み相談をした際に、優しい言葉をかけられてもかえって孤独を感じてしまうという意見もありました。AIが発する言葉には本当の意味での感情や体温がこもっておらず、定型的な反応にすぎないと感じてしまうからです。
【hana****さん|女性|30代後半】
・AIは悩み相談にも使っている人は多いと感じるが、ずっと使っていると共感や優しさばかりを示すAIの反応が、却って孤独をもたらすような感覚がある。ふとした会話、どうでもいい内容の会話などこそ、AIに頼ることができないような気がする。人間の言語化できないコミュニケーションは人間自身が普段自覚していない部分が多く、AIが学習することができないためではないかと思う。人間同士のコミュニケーションは完全にはAIには代替できないと感じる。
人が直接発する言葉には喜びや悲しみといった魂が宿っており、そういった人間同士の心の通い合いこそが事業を運営していく上でも極めて大切な要素になります。優しい嘘をついて相手を守るといった複雑な配慮も、思いやりの心を持つ人間にしかできない対応でしょう。
[[筆者|私はシステム開発に関わる仕事柄、論理的に考えることを求められます。ですが、結局やり抜く力やチームで行動する力、メンバーのモチベーションを高める力などは、どこまでいっても人間的であり、決してロジカルだけで片付く問題ではないと感じます。ですので技術ばかりに偏重するのではなく、人間としてどうあるべきか、ということにも重きを置いて活動しています]]
表情や声色などの非言語情報
人間のコミュニケーションの手段は言葉だけではありません。
アンケートでは、目や顔の表情、声のトーン、身振り手振りといった非言語コミュニケーション(言葉を使わずに態度や表情などで情報を伝える方法のことです)の重要性が多数指摘されていました。
【may****さん|女性|30代後半】
・感情が伝わらないのでやっぱり目を見て話をすることが大事【蜜****さん|女性|30代前半】
・目は口ほどに物を言う、ということわざがあるように、対面でしか得られない情報はあると考えております。同じ言葉を発していても、声量や話し方で得られる情報や情報の信頼度(この情報を信用してもいいのか?)に差異が出ると考えております。
また、AIが集計したネット上の膨大なレビューよりも身近な人の一つのレビューで「じゃあ行ってみようかな」となるケースも考えられます(実際、私も友達が「大阪万博良かったよ」の言葉だけで大阪万博に行きました)。
言葉足らずで申し訳ないですが、感情に左右される場面(「行きたいな」「やってみたいな」など)の背中のひと押しではAIよりも人の方が優れていると思います。【kaj****さん|女性|30代後半】
・その人なりの雰囲気や話し方、振る舞いなどその人らしさが一目でわかるのはやはり対面での会話、コミュニケーションだと思います。【kaede****さん|女性|50代前半】
・文字・文章では伝わらない感情はあります。人間同士が会話すれば声のトーンや話し方の速度、目の動かし方や口元のゆがみ、表情や仕草など、おなじ言葉でも全く変わってきます。これは表情豊かに作られたロボットであっても現時点ではまだ追いついていない内容だと思われます。
人間は「おはよう」の言葉一つでその人のその時の感情や自分への感情、その日の体調なども推測出来る方が多いです。以前に病院で受付フロアにいたAIロボットに挨拶をしたことがありますが、病院で必要とされる情報しかインプットされていないためか自分への気遣いの言葉は出てきませんでした。AIはすごい技術だと思う反面、インプットされる情報次第で対応が変わるのは感情が無くて怖いとも感じました。
たとえば、部下が「その仕事、できます」と言った場合でも、人間であれば顔色や声の震えなどから本当の自信の度合いを察知することができます。しかし、現状のAIはそのような言葉以外の微妙な変化を読み取って、相手の状況に合わせた細やかな配慮をすることはできません。
日本人同士のコミュニケーションにおいては、空気を読むという特殊な能力が円滑な業務遂行を助けている場面が多々あります。対面で会話をして相手の様子を感じ取れる人間ならではの能力が、ビジネスの現場でも重宝されるのでしょう。
その場の空気感と臨機応変な対応
次に、その場に流れる空気感と、それに応じた臨機応変な対応力について確認してみましょう。
人間は、相手の機嫌が良さそうであれば大胆な提案を行い、逆に調子が悪そうであれば本題に入る前に気遣いの言葉をかけるといった調整を無意識のうちに行っています。
【ave****さん|女性|40代後半】
・日本人同士の間でのコミュニケーションの場合では、「空気を読む」という特殊な能力はAIには代用できないと思います。
また、人間は皆同じにできていない為、各々の人間の細かな心理状況が関わること全て(ケースバイケースでの的確な判断、融通を利かせる、会話・やり取りしている相手によって日本語の言語の細かい言い回しを変える、など)AIでが代用できないかと思います。【m****さん|女性|30代前半】
・その場に流れる空気感や相手の細かい表情を瞬時に判断して求められる言動を取るのはAIに代替されないのではないかと思います。【ゆん****さん|女性|30代前半】
・人の価値としては共感力や非言語の読解力だと思います。
AIではある程度」この反応をしたらこの気持ちになる人が多い」という傾向などで人間の考えや感情を読み取れると思いますが、人の価値としてその人の持つ雰囲気や空気感を感じ取れることこそ人にしかできないものだと思います。また勘なども人の能力だと思います。【bust****さん|女性|30代後半】
・相手の表情を見ながら、どこまで言っていいのか、どんな言葉で伝えるべきか察する(空気を読む)力はAIには出来ないと思う。また、最近相手にどのような出来事が起こっていたのかを知って、それに合った雑談を話すことができるのも人間ならではだと思います(例えば先日誕生日だったので、おめでとうと言うなど)。【shih****さん|女性|30代前半】
・それまでのやりとりや、対面で感じとった雰囲気や空気感などはAIではなかなか感じられず、説明するのも難しいので、理解できない部分があるかなと思います。そういった部分を人間は感じ取れるので、AIに代替されない部分かなと感じます。
また、飲食店勤務の方からは、スマートフォンで注文できるにもかかわらず、わざわざ店員と雑談を交わすことを楽しみにしているお客様を見た、という声も確認できました。
【C5****さん|女性|50代前半】
・飲食店に勤務しお客様対応を担当している。飲み物や軽食が欲しいだけであればコンビニエンスストアで十分足りるはずだが、店舗に訪れ、テーブルからスマホで注文可能であるものをわざわざレジカウンターにきて注文して雑談を交わすことを楽しみにしているお客様を見ると、うまく説明できないが「人がいることで安心する」のだと思う。
このような、場の緊張感や沈黙の意味を体感し、人間同士が同じ時間を共有することで生まれる安心感は、機械には提供できない領域でしょう。
その他、ペットボトル回収機の前で待っている次の人に対して、どのような言葉をかけるべきか悩むという、かなり具体的なケースをあげていた方もいました。
【丘里****さん|女性|50代後半】
・人間だとどうやって言おうか考えますが、AIだと決まった言葉しか出てこないと思います。ペットボトル回収機で回収が終わった後にさっきから待っていた次の人に何と声をかけるか、考えていたときにそう思いました。
状況に合わせて最適解ではないかもしれない行動をとれることも、人間の大切な魅力の一つですね。
仕事におけるAI導入の現状
さて、私たちの職場にAIが導入されることで、業務の進め方はどのように変化しているのでしょうか。ビジネスの現場における現状を確認してみます。
情報処理の正確性とAIの限界
まず、AIによる情報処理の正確性とその限界について考えてみます。AIは過去の膨大なデータから最適な答えを導き出すため、計算や情報の整理においては素晴らしい能力を発揮します。
しかし、AIが提示した答えがその場の実際の様子や実情と合致しないケースも発生しています。
【con****さん|男性|50代前半】
・AIが進化しても、人間の感情に寄り添う共感力や倫理的な判断力は代替されにくいと感じます。特に、複雑な状況での交渉や信頼関係の構築は、人間ならではの価値があると思います。【hiko****さん|男性|50代前半】
・人は感情があるので取引先の方も同じ人でも日によって反応が違い踏み込んで話して良い時とそうでない時があります。その微妙な感情は実際に対面しその人を知ることの体験のみからしか読み取れまいと思います。一般的なコミュニケーションではなく個々の人の日々の感情に沿ったコミュニケーションはAIより人間間の直接のコミュニケーションが勝ると思います。
また、旅行会社の企画書をAIで作成しようとした際にも、地方のリアルな状況や経験に基づいた視点を組み込むことができなかったという声がありました。
【sugi****さん|男性|50代後半】
・旅行会社の企画書をAIを使って作成しましたが、どんなにやっても地方の状況までは吸い上げることができません。経験した人間にしかない視点を持つことが人の価値を保つのだと考えます
つまり、過去のデータにはない新しいビジネスモデルの会計処理や、現場特有の複雑な文脈を正確に理解して対応することは、まだAIには難しいと言えるでしょう。
最終的には人間が実態に合わせて微調整を行う作業が現在は必要となっています。
創造的な業務と新しい価値の提供
つづいて、新しい価値を生み出す創造的な業務について確認しましょう。AIは既存の情報を組み合わせて新しい提案を行うことはできますが、それはあくまで与えられたデータの範囲内にすぎません。
人間は、一見すると矛盾しているような事柄や、論理的には説明がつかない感覚の中から、思いもよらない面白いアイデアを生み出すことがあります。アンケートの中にも、人間の判断には「たわみ」や「遊び」があり、そこから化学反応が起きて新しい成長につながるという意見がありました。
【Stac****さん|女性|40代後半】
・私は中高年になりますので、若い人たちがどう考えているか、どう判断するのか、感覚がことなるため、正しいと言われないかもしれませんが、どこかたわみのようなものが残っていると、面倒な面もたしかにありますが、新しい考えや対応力が生まれて結果は思いもよらないけど面白いことができるときもあります。その場の流れで感覚的に決めていくという、たわみが残っていたら人間らしさがあるのではないかと思います。
このような、感情の揺れ幅や他者との意見のぶつけ合いを通して、これまでになかった創造的な価値を提供し続けることが、人間の大きな役割となるでしょう。効率だけを追い求めていては生まれない斬新な発想が、物事を前進させる原動力になります。
責任を伴う最終判断と意思決定
仕事において避けて通れない最終判断と意思決定について、AIを活用することで、さまざまな選択肢や分析結果を迅速に得ることはできますが、その結果を実際のビジネスにどう生かすかを決めるのは人間です。
【コン****さん|男性|40代前半】
・本業で企業法務に携わっております。生成AIの利用でリーガルチェックなどは人間の目を通さずにリスク条項を瞬時に列挙できるようになりました。そのリスクを受け入れられるかどうかの判断には生身の人間の思惑等の機微的な匙加減が必要でありそこに『人の価値』を感じます。
AIが提示した回答の中には誤った内容が含まれている可能性があり、それを疑い、正しいかどうかを吟味する力が必要です。さらに、組織として大きな決断を下す際には、周囲の人々の感情や今後の人間関係に与える影響までを総合的に考慮しなければなりません。
だからこそ、情報を精査し、リスクを引き受けて最終的な責任を持つという行為は、人間にしか担えない重みのある業務なのでしょう。どんなに技術が進歩しても、決断の責任を機械に簡単に押し付けることはできません。
ビジネスサイドの悩みと解決
ここからは調査結果と関連させながら、マネジメントの視点でコミュニケーション課題に対する具体的な解決の方向性を探ります。
効率化とコミュニケーションのバランス
はじめに、業務の効率化と社内コミュニケーションのバランスについて考えてみます。経営陣は利益を追求するためにAIを導入し、定型業務をスリム化したいと考える一方で、人間同士の対話が希薄になってしまうのではないかという懸念もあるでしょう。
アンケートにも、AIの導入によってすべてが便利になる半面、コミュニケーションが希薄になりかねないという的確な指摘がありました。効率化できる部分はAIに任せつつ、浮いた時間を活用して従業員同士が対面で意見を交わす時間を意識的に設けることが解決の糸口となります。
お互いの顔を見て雑談を交わすような些細な時間が、組織全体の円滑な運営につながっていくと考えられます。システム化を進めるほど、意図的に人間らしい会話の機会を作ることが大切になります。
[[筆者|意図的に雑談の時間を作る、意図的に対面で会うなどが挙げられます。せっかくAIで効率化したのですから、浮いた時間の一部を人間的な活動に充てるのは悪いことではないはずです]]
人間関係の構築と心理的安全性の確保
つづけて、良好な人間関係の構築と心理的安全性について確認します。心理的安全性とは、組織の中で自分の意見や気持ちを安心して発言できる状態のことです。
会社で一つの事業に共同で取り組む仲間との信頼関係は、システムや機械によって自動的に構築されるものではありません。アンケートの回答にあるように、新規の取引先を獲得した従業員をチーム全員で褒め称える文化など、相手のことを深く理解しているからこそ出てくる温かい言葉のやり取りが重要です。
こうした感情を伴う人間同士のコミュニケーションを大切にすることで、誰もが安心して働ける環境を作り出すことができるでしょう。信頼関係があるからこそ、困難な課題にもチーム一丸となって立ち向かうことができます。
従業員のモチベーション維持
従業員のモチベーションをどのように維持するか、という課題は普遍的なものでありながら、絶対的な解決策は未だ見つかっていません。まずそもそも、人のパフォーマンスは、その日の体調や精神的な状態によって大きく変化するものです。
自らの言葉と態度でメンバーに思いを伝え、感情を揺さぶることで、組織全体のやる気を引き出していくべきでしょう。熱意やビジョンを語りかける人間の言葉こそが、人を動かす最大の武器になります。
AIに仕事奪われる懸念への対策
世の中で広く語られている、AIに仕事を奪われるのではないかという不安に対して、私たちはどのように備えていくべきなのでしょうか。個人や組織としての防衛策を考えてみます。
自らの付加価値を高める方法
まず、私たち一人ひとりが自らの付加価値を高めていく方法について、論理的で事務的な処理においては、いずれAIが人間の能力を上回る分野が増えていくはずです。
しかし、人間にはAIにはない相手の心を推し量る力やその場の空気を読む力が備わっています。業務を行う際には、ただ正確に作業をこなすだけでなく、相手が何を求めているのかを想像し、言葉にされていない要望をくみ取って提案することが大切です。
マニュアル通りではない相手に寄り添った対応を心がけることが、自分の仕事の価値を高め、AIに代替されない存在になるための有効な手段となるでしょう。思いやりのある行動は、どのような職種においても高く評価されます。
雑談やアイスブレイクが持つ効果
普段の業務の中にある雑談やアイスブレイクの重要性について考えてみましょう。アイスブレイクとは、初対面の人との緊張をほぐすための簡単な会話のことです。
アンケートの意見にもあるように、相手が自分の話した些細なことを覚えていてくれるという感動や喜びは、人間同士のやり取りからしか生まれません。AIが覚えていたとしてもそれはデータベース上に保存してあるからであり、好意的に覚えていてくれているということにはならないからです。人間の記憶はあいまいで失われやすいものです。その中でも覚えてくれていた、ということが重要なのであって、データベース上に永久に保存されていることが重要なのではありません。
ですので、仕事の本題に入る前のちょっとした雑談を大切にすることが、他者との関係性を深めるための大きな武器となるでしょう。無駄に思える会話こそ、信頼を築くために必要不可欠な要素となり得ます。
共通の経験を通じた信頼の向上
次に、同じ時間や空間を共有することによる信頼の醸成について確認してみましょう。特定の相手との深いコミュニケーションは、お互いが共有している過去の思い出や共通の認識の上に成り立っています。
たとえば、困難なプロジェクトを一緒に乗り越えたり、時には本音で意見をぶつけ合ったりした経験は、AIに学習させることができない人間だけの歴史です。このような共通の経験を通じて築かれた信頼関係は、ちょっとやそっとのことでは揺らがない力を持っています。
[[筆者|少しロジカルな話をすると、私の研究分野の1つに「キャリアインプリンティング」という「刷り込み効果」に関するものがあります。特定の組織の出身者はCEOになることが多い、といった事実を明らかにするものですが、この中でも「誰と一緒に働いていたのかが重要」「一緒に困難を乗り越えた人が後々自分の力になる」という指摘があり、これはAIに代替できるような質のものではありません]]
だからこそ、日々の業務の中で仲間と苦楽を共にし、感情を共有する機会を大切に育てていくべきでしょう。一緒に汗を流したという実感は、個人間の結束、ひいては組織の結束力を高めてくれます。
AIと人が共存する組織づくり
それでは最後に、AIの利便性を享受しながらも、人間の価値を最大限に発揮できるような組織をどのように作っていくべきかを確認します。未来に向けた前向きな視点を持ちましょう。
AIをツールとして使いこなす視点
AIをあくまで便利なツールとして使いこなす視点を持つことについて考えてみます。
AIに指示を出し、その能力を適切に引き出すのは人間の役割です。
人間が目的を明確にし、論理的に順序立ててAIを働かせる能力を持っていなければ、いくら優れたシステムを導入しても宝の持ち腐れになってしまいます。そして、AIが作成した文章やデータに対して、人間らしさや温かみが欠けていないかを最終確認し、自分なりの言葉で表現し直す作業が必要です。
AIにすべてを丸投げするのではなく、人間の知識や経験を掛け合わせてより良いものにしていく姿勢が組織全体に期待されるでしょう。ツールに振り回されず、主体的に活用する意識を持つことが大切です。
人間同士の対話がもたらす化学反応
人間同士の対話がもたらす化学反応も重要です。
異なる価値観や背景を持つ人間が直接顔を合わせて会話をすることで、一人では決して思いつかなかったような新しい考えが生まれることがあります。
AIは波風を立てず、使用者の都合が良いように合わせてくれることが多いですが、人間同士のコミュニケーションには意見の対立や感情のぶつかり合いも起こります。しかし、そのような摩擦や揺らぎを乗り越えて話し合いを続けることで、より高いレベルでの合意や革新的なアイデアが創出されるはずです。
ですので、効率だけを求めるのではなく、無駄に思えるような対話の時間も組織にとっての財産として評価していくべきでしょう。日本の文化であるわび・さびを意識しながら他者と協力する姿勢も、人間ならではの強みです。
人間にしかできないことを磨く組織風土
最後に、人間にしかできないことを磨き続ける組織風土の構築について確認してみましょう。これからの時代は、AIが定型業務を担う分、人間はより戦略的で創造的な役割に注力していくことになります。
そのためには、相手の感情に寄り添うことや、非言語コミュニケーションを大切にする姿勢を示すことが重要です。採用面接の場面で、嘘で塗り固められた学生のエピソードを人間の直感で見抜くことができるように、数値化できない行動や感覚を高く評価する仕組みを取り入れるのも良い方法です。
そうすることで、組織全体が人間ならではの優しさや共感力を大切にするようになり、AIには真似できない魅力的な企業へと成長していくことができるでしょう。人を思いやる心こそが、これからのビジネスを支えていく柱になります。
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当記事の執筆者
CIT経営開発事務所 代表
井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)
IT・事業コンサルタント
IT・開発エンジニア
行政書士R6合格者未登録
大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。


