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【革新と倫理】手数料無料株式、キックスケーター、個人データの取引、ダークストア、代替肉...イノベーションと倫理的ジレンマ-3【INNOVATION INSIGHTS】

2025.10.30

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    2025/10/30 09:47

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    【革新と倫理】手数料無料株式、キックスケーター、個人データの取引、ダークストア、代替肉...イノベーションと倫理的ジレンマ-3【INNOVATION INSIGHTS】 スライド画像

    革新的なアイデアを形にしたとき、待ち受けるのは市場の熱狂だけではありません。既存業者からの反発、予期せぬ倫理的課題、そして法規制の壁。これらは、イノベーションの火を消しかねない「倫理的ジレンマ」として立ちはだかります。

    そこで、本連載では、起業を目指すビジネスパーソンおよび新規事業開発担当者の皆様に向け、イノベーションと倫理の衝突事例をご紹介します。主な舞台を米国とし、革新的なビジネスが直面した既存業者からの反発、倫理的課題、法規制の壁といった「倫理的ジレンマ」の具体例を、実例を通して連続的に解説します。今回はその第三回です。

    ※ご覧いただくにあたってのご注意
    本記事と同連載については、あくまでも執筆時(2025/10/28)の事実ベースの情報になりますので、特定の企業やその他団体に対し、何ら意見を述べるものではございません。予めご理解ください。

    シリーズ記事はこちら▼

    本記事はわかりやすく伝えるため、以下の構成でご紹介していきます。

    ・事業要約タイトル➡影響を与えた対象
    ・主な企業
    ・主な事業内容
    ・主なビジネスモデル
    ・主なバリューチェーン
    ・同種の既存事業
    【争点】

    まず該当企業とそもそもの事業内容やビジネスモデル、同種の既存事業をご紹介し、その後なぜ問題とされているかという【争点】を説明いたします。

    特に起業を目指すビジネスパーソンおよび新規事業開発担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

    11) 手数料無料オンライン株式取引➡従来のオンライン証券会社

    主な企業

    Robinhood

    主な事業内容

    ・「手数料無料」オンライン株式取引アプリ

    主なビジネスモデル

    顧客(主に個人投資家)から株式売買の取引手数料を徴収しない「手数料無料」を掲げる。実際の収益源は、顧客の売買注文(オーダフロー)をHFT(高頻度取引)業者やマーケットメーカーに販売し、リベートを得る「PFOF (Payment for Order Flow)」が中心。

    主なバリューチェーン

    1. アプリ開発・運営
    2. 顧客獲得(ゲーム的なUI、紹介ボーナス)
    3. 顧客の売買注文の受信
    4.注文情報をHFT業者等に販売
    5. HFT業者が売買を執行

    同種の既存事業

    ・従来のオンライン証券会社(E*TRADE, Charles Schwab等)
    ・対面型の証券会社

    【争点】

    顧客の最善利益(忠実義務)違反
    「手数料無料」を謳いながら、実際にはPFOFにより顧客が不利な価格(最良執行価格ではない価格)で約定させられている疑義。ビジネスモデル自体が、ブローカーが顧客の最善の利益のために行動すべきという証券業界の根本的な倫理(忠実義務)に反しているとして、SEC(証券取引委員会)や州当局、個人投資家から提訴・調査された。

    参考情報:
    Lemon v. Robinhood Financial...
    https://www.classaction.org/media/lemon-v-robinhood-financial-llc-et-al.pdf

    SEC Considers Banning Payment for Order Flow
    https://www.investopedia.com/sec-considers-banning-payment-for-order-flow-5199447

    12) 電動キックスケーター・ドックレスシェアリング➡自転車レンタル(ドック型)、公共交通機関、タクシー

    主な企業

    Bird, Lime 等

    主な事業内容

    ・電動キックスケーター・シェアリングサービス

    主なビジネスモデル

    アプリで解錠・利用できる電動キックスケーターを、特定のドック(駐輪場)を設けずに都市の公共空間(歩道など)に自由に配置(ドックレス・モデル)。利用時間や距離に応じた料金を徴収する。

    主なバリューチェーン

    1. スクーターの調達・都市部への配置
    2. アプリ開発・決済システム運営
    3. 顧客による利用
    4. スクーターの回収・充電・再配置(「Juicer」と呼ばれるギグワーカーが担当)

    同種の既存事業

    ・自転車レンタル(ドック型)
    ・公共交通機関
    ・タクシー

    【争点】

    公共空間の私物化と公衆の安全(公的不法妨害)
    ドックレスによるビジネスモデルが、歩道、車椅子用スロープ、ビルの出入り口といった公共の通行権(Rights of Way)を、企業の利益のために「投棄(dumping)」し、私物化している点が争点。これにより歩行者、特に障害者や高齢者の通行を妨げ、安全を脅かす「公的不法妨害 (Public Nuisance)」にあたるとして、サンディエゴ市やロサンゼルス市などで住民や市当局から集団訴訟。

    参考情報:
    Lime Class Action Lawsuit Says Scooters Block City Sidewalks
    https://topclassactions.com/lawsuit-settlements/consumer-products/auto-news/lime-class-action-lawsuit-says-scooters-block-city-sidewalks/

    City of San Diego and E-Scooter Start-Up Companies, Bird & Lime, Sued by Disability Rights Group Over Obstructed Public Walkways
    https://news.justia.com/city-of-san-diego-and-e-scooter-start-up-companies-bird-lime-sued-by-disability-rights-group-over-obstructed-public-walkways/

    13) データブローカー➡マーケティングリサーチ会社

    主な企業

    Kochava, Mobilewalla 等

    主な事業内容

    ・データブローカー(特に位置情報・健康情報)

    主なビジネスモデル

    モバイルアプリに組み込まれたSDK(ソフトウェア開発キット)を通じ、ユーザーのスマートフォンの正確な位置情報を大量に収集。このデータを分析・パッケージ化、広告主や第三者に販売する。

    主なバリューチェーン

    1. SDKの開発とアプリ開発者への提供
    2. ユーザーの位置情報・行動データの収集
    3. データの分析・セグメント化(例:「中絶クリニック訪問者」)
    4. センシティブなデータリストの販売

    同種の既存事業

    ・従来のマーケティングリサーチ会社(アンケートや公的データに基づくもの)

    【争点】

    センシティブな個人情報(プライバシー)の倫理なき取引
    FTC(連邦取引委員会)から、消費者の最もセンシティブな情報(例:診療所、礼拝所、DVシェルターへの訪問履歴)を本人の認識なしに収集・販売するビジネスモデル自体が、消費者に具体的な危害(差別、ストーキング、暴力)を及ぼす危険性が高いと提訴された。プライバシーに関する既存の倫理観や道徳を根本から破壊する行為とみなされている。

    参考情報:
    FTC Sues Kochava for Selling Data that Tracks People at Reproductive Health Clinics, Places of Worship, and Other Sensitive Locations
    https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2022/08/ftc-sues-kochava-selling-data-tracks-people-reproductive-health-clinics-places-worship-other

    FTC’s Amended Complaint Against Kochava Survives Motion to Dismiss
    https://www.hipaajournal.com/ftcs-amended-complaint-against-kochava-survives-motion-to-dismiss/

    14) ダークストア(超速便・Qコマース)➡コンビニ、スーパー、ネットスーパー

    主な企業

    Gopuff, Jokr, Buyk 等

    主な事業内容

    ・ダークストア(超速便・Qコマース)

    主なビジネスモデル

    「15分で配達」等を謳う即時配達サービス。表向きは小売店(デリバリーアプリ)だが、実際は公道に面した店舗(顧客は入れない)を「ダークストア」と呼ばれる小規模な配送専用倉庫として運営する。

    主なバリューチェーン

    1. 都市部一等地での小規模倉庫(ダークストア)の賃借
    2. 商品の仕入れ・在庫管理
    3. アプリ経由での注文受付
    4. 倉庫内でのピッキング
    5. ギグワーカーによる即時配達

    同種の既存事業

    ・コンビニエンスストア
    ・スーパーマーケット
    ・従来の(配達に時間がかかる)ネットスーパー

    【争点】

    地域のゾーニング(土地利用)法規と小売文化の破壊
    ビジネスモデルが、本来「小売店」が営業すべき(とゾーニング法で定められた)地域で、実質的な「倉庫業」を営んでいる点が問題視。ニューヨーク市などでは、これらのダークストアが地域の小売文化(商店街)を破壊し、歩行者の往来を減らすとして、ゾーニング法違反で営業停止を求める動きや訴訟が起こされた。

    参考情報:
    NYC politicians take aim at the new apps promising speedy grocery deliveries, saying they may violate a swath of city rules
    https://nycitylens.com/nyc-grocery-startups-face-new-foe-zoning-laws/

    Bodegas are looking to zoning laws to defend their turf against instant delivery start-ups
    https://www.cnbc.com/2022/02/04/bodegas-look-to-zoning-to-defend-against-instant-delivery-rivals.html

    15) 代替肉メーカー➡畜産業者、食肉加工業者、豆腐ハンバーグなど従来の植物性食品

    主な企業

    Impossible Foods, Beyond Meat

    主な事業内容

    ・代替肉(植物由来)メーカー

    主なビジネスモデル

    植物性タンパク質(大豆、エンドウ豆など)を原料に、従来の食肉(牛肉、豚肉など)の味や食感を科学的に再現した「代替肉」を開発・製造・販売する。

    主なバリューチェーン

    1. 原材料の研究開発(ヘム鉄など)
    2. 製造・加工
    3. スーパーマーケットやレストランへの卸売
    4. 「ミート」「バーガー」「ソーセージ」等の名称でのマーケティング

    同種の既存事業

    ・従来の畜産業者
    ・食肉加工業者
    ・豆腐ハンバーグなどの従来の植物性食品

    【争点】

    「肉」の定義と既存の食肉文化の保護
    従来の畜産業界やそのロビー団体から、「肉 (Meat)」や「ビーフ (Beef)」といった伝統的・文化的な名称を植物由来の製品に使用することは、消費者を欺き(誤認させ)、既存の食肉文化の価値を不当に貶めるものだとして、複数の州(ミズーリ州、オクラホマ州など)で表示を禁止する法律が制定され、それに対し代替肉メーカー側が(表現の自由を盾に)無効を求めて提訴するという形で争われている。

    参考情報:
    Plant-based meat alternatives are trying to exit the culture wars – an impossible task?
    https://theconversation.com/plant-based-meat-alternatives-are-trying-to-exit-the-culture-wars-an-impossible-task-229684

    Beyond Meat and Impossible Foods burgers could change the way we think about masculinity
    https://qz.com/quartzy/1603993/beyond-meats-vegan-burgers-could-change-the-way-we-think-about-masculinity

    まとめ

    今回の連載では第3弾として、主に手数料無料株式、キックスケーター、個人データの取引、ダークストア、代替肉について、米国における革新的な事例と争点をご紹介しました。それぞれのビジネスが社会から受けている摩擦を今回もご確認いただけたかと思います。貴社の新規事業立ち上げ時やサービス設計時における、リスクアセスメントの参考資料としてご活用いただければ幸いです。

    次回に続きます▶
    (2025/10/31執筆予定)

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    当記事の執筆者

    CIT経営開発事務所 代表
    井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)

    IT・事業コンサルタント
    IT・開発エンジニア
    行政書士R6合格者未登録

    大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。