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【革新と倫理】暗号資産, 不動産, 遺伝子, ゴーストキッチン...イノベーションと倫理的ジレンマ-2【INNOVATION INSIGHTS】

2025.10.29

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    2025/11/2 04:59

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    革新的なアイデアを形にしたとき、待ち受けるのは市場の熱狂だけではありません。既存業者からの反発、予期せぬ倫理的課題、そして法規制の壁。これらは、イノベーションの火を消しかねない「倫理的ジレンマ」として立ちはだかります。

    そこで、本連載では、起業を目指すビジネスパーソンおよび新規事業開発担当者の皆様に向け、イノベーションと倫理の衝突事例をご紹介します。主な舞台を米国とし、革新的なビジネスが直面した既存業者からの反発、倫理的課題、法規制の壁といった「倫理的ジレンマ」の具体例を、実例を通して連続的に解説します。今回はその第二回です。

    ※ご覧いただくにあたってのご注意
    本記事と同連載については、あくまでも執筆時(2025/10/28)の事実ベースの情報になりますので、特定の企業やその他団体に対し、何ら意見を述べるものではございません。予めご理解ください。

    本記事はわかりやすく伝えるため、以下の構成でご紹介していきます。

    ・事業要約タイトル➡影響を与えた対象
    ・主な企業
    ・主な事業内容
    ・主なビジネスモデル
    ・主なバリューチェーン
    ・同種の既存事業
    【争点】

    まず該当企業とそもそもの事業内容やビジネスモデル、同種の既存事業をご紹介し、その後なぜ問題とされているかという【争点】を説明いたします。

    特に起業を目指すビジネスパーソンおよび新規事業開発担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

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    6) 暗号資産取引所プラットフォームー➡金融法規と投資家保護

    主な企業

    Coinbase, Binance US 等

    主な事業内容

    ・暗号資産(仮想通貨)取引所プラットフォーム

    主なビジネスモデル

    顧客が暗号資産(ビットコイン、イーサリアム等)を売買・保有できるプラットフォームを運営。取引手数料や、特定の資産を預ける(ステーキング)ことによる報酬の一部を収益源とする。

    主なバリューチェーン

    1. プラットフォーム開発・維持
    2. 各種暗号資産の上場審査
    3. 顧客獲得と口座開設(KYC)
    4. 取引の実行・決済
    5. カストディ(資産保管)、ステーキングサービス

    同種の既存事業

    ・ニューヨーク証券取引所(NYSE)
    ・NASDAQ
    ・従来の証券会社(ブローカー・ディーラー)

    【争点】

    既存の金融(証券)法規の回避と投資家保護
    米証券取引委員会(SEC)から、プラットフォームで取引される多くの暗号資産(トークン)は実質的に「有価証券」であり、Coinbase等は「未登録の証券取引所・ブローカー」として運営していると提訴されている。既存の証券法が定める厳格な登録義務や投資家保護の仕組み(情報開示など)を意図的に回避するビジネスモデルそのものが、既存の金融文化と法秩序を破壊している点が最大の争点。

    参考情報:
    SEC Charges Coinbase for Operating as an Unregistered Securities Exchange, Broker, and Clearing Agency
    https://www.sec.gov/newsroom/press-releases/2023-102

    Coinbase demands SEC documents in crypto regulation dispute
    https://dig.watch/updates/coinbase-demands-sec-documents-in-crypto-regulation-dispute

    7) PropTech, iBuyer(インスタント・バイヤー)➡不動産仲介業者・不動産エージェント

    主な企業

    Zillow, Opendoor

    主な事業内容

    ・PropTech(iBuyer - インスタント・バイヤー)

    主なビジネスモデル

    (※ZillowはiBuyer事業から撤退) 住宅の売り手からオンラインで物件情報を取得し、独自の(しばしばAIを利用するが争点はそこではない)価格査定に基づき、即時に現金での買い取りオファーを提示。買い取った物件をリフォームし、再販して利益を得る。

    主なバリューチェーン

    1. 価格査定モデルの開発
    2. 売り手へのマーケティング(「即時売却」)
    3. 物件の買い取り(仕入れ)
    4. リフォーム・修繕
    5. 物件の再販売(出口)

    同種の既存事業

    ・従来の不動産仲介業者(リアルター)
    ・不動産エージェント

    【争点】

    市場の透明性と消費者利益の阻害
    (Zillowは投資家から「査定の不透明性」で訴訟を受けた過去あり) ビジネスモデルが、従来の「仲介(エージェント)」モデルを破壊し、プラットフォーマー自身が市場のプレーヤー(買い手・売り手)となることの倫理性が問われる。特に、消費者(売り手)に対し、「仲介手数料はかからないが、提示価格は市場価格より低い」というビジネスモデルの不透明性や、市場価格の安定性を損なう可能性が指摘されている。(※注:Zillowの別事業では、仲介手数料の仕組みに関する独禁法上の疑義も出ている)

    参考情報:
    Zillow sued over how it displays Zestimate home valuation tool in some partner listings
    https://www.geekwire.com/2018/zillow-sued-displays-zestimate-home-valuation-tool-partner-listings/

    Legal Update: Zillow Faces New Class-Action Lawsuit Over Agent Leads
    https://caaraz.com/legal-update-zillow-faces-new-class-action-lawsuit-over-agent-leads/

    8) ゴーストキッチン➡レストラン・仕出し・弁当屋

    主な企業

    CloudKitchens (City Storage Systems)

    主な事業内容

    ・ゴーストキッチン(バーチャルレストラン)運営

    主なビジネスモデル

    デリバリー専用に設計された厨房(ゴーストキッチン)を多数の「バーチャルブランド」(実店舗を持たないデリバリー専用ブランド)に貸し出す。または自ら運営する。デリバリーアプリ上では、複数の独立したレストランが存在するように見える。

    主なバリューチェーン

    1. 厨房施設の賃貸・建設
    2. 厨房設備のリース・管理
    3. 「バーチャルブランド」の開発支援・運営
    4. デリバリーアプリ(UberEats等)との連携
    5. ブランド運営者からの賃料・手数料徴収

    同種の既存事業

    ・実店舗を持つレストラン
    ・従来の仕出し
    ・弁当屋

    【争点】

    消費者の信頼と既存の衛生・表示文化の破壊
    消費者がデリバリーアプリで注文する際、その料理がどこで(どの衛生環境で)作られているかを意図的に不透明にするビジネスモデルが問題視されている。実店舗を持つレストランという既存文化(衛生状態が確認できる、ブランドと実体が一致している)を破壊し、消費者を欺いている(実際には一つの厨房で多数のブランドが作られている)として、消費者から集団訴訟が起こされている。

    参考情報:
    I Ain't Afraid of No Ghost…Kitchen! A New Realm of Consumer Protection After the INFORM Consumers Act
    https://brooklynworks.brooklaw.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1441&context=bjcfcl

    Ghost Kitchens: A Rising Trend or Fading Phenomenon?
    https://chakawal.com/2024/10/05/ghost-kitchens-a-rising-trend-or-fading-phenomenon/

    9) 不動産のフラクショナル(分割)所有権➡所有者責任と地域社会

    主な企業

    RealToken

    主な事業内容

    ・不動産(住宅)のフラクショナル(分割)所有権

    主なビジネスモデル

    デジタル(ブロックチェーン)トークンを利用し、特定の不動産(主に賃貸住宅)の所有権を小口化(フラクショナル化)して販売。投資家は少額から不動産投資ができ、家賃収入や売却益をトークン保有比率に応じて受け取る。

    主なバリューチェーン

    1. 投資対象物件の選定・取得
    2. 物件所有権のトークン化(法的手続き)
    3. プラットフォームでのトークン販売
    4. 物件の管理・運営(賃貸管理)
    5. 収益(家賃)の分配

    同種の既存事業

    ・不動産投資信託(REIT)
    ・動産共同所有(共有名義)
    ・従来の大家業

    【争点】

    所有者責任の希薄化と地域社会への影響
    ビジネスモデルが不動産の所有権を極度に細分化・匿名化させるため、物件管理(修繕、安全維持)の責任主体が曖昧になる。デトロイト市では、RealToken関連物件が多数の安全条例違反で放置されているとして、市当局が「所有者を隠すための仕組みだ」として提訴。地域社会の安全や住環境を維持するという従来の「家主(大家)」の文化的・法的責任を破壊している点が争点。

    参考情報:
    City scores major win for tenants living in troubled Real Token properties that are subject of sweeping lawsuit
    https://detroitmi.gov/news/city-scores-major-win-tenants-living-troubled-real-token-properties-are-subject-sweeping-lawsuit

    Detroit sues blockchain real estate company over poor conditions at hundreds of rentals
    https://www.crainsdetroit.com/real-estate/detroit-sues-real-token-over-poor-conditions-hundreds-rentals

    10) D2C遺伝子検査➡病院・医師による従来型遺伝子検査

    主な企業

    1Health.io (旧 Vitagene)

    主な事業内容

    ・D2C(消費者直結)遺伝子検査

    主なビジネスモデル

    消費者にオンラインで遺伝子検査キットを販売。唾液サンプルを返送してもらい、健康、栄養、祖先などに関するレポートを提供する。収集した遺伝子データを(匿名化して)第三者(製薬会社、栄養補助食品メーカーなど)に提供することで追加収益を得る。

    主なバリューチェーン

    1. 検査キットの開発・製造
    2. オンラインでのマーケティング・販売
    3. 遺伝子サンプルの回収・分析
    4. 分析レポートの作成・提供
    5. (争点)収集データの第三者への販売・共有

    同種の既存事業

    ・病院やクリニックで医師を通じて行われる従来の遺伝子検査

    【争点】

    データプライバシーと消費者の自己決定権(倫理)
    連邦取引委員会(FTC)から、収集した非常にセンシティブな遺伝子・健康データを、消費者に十分な通知や同意なしに、遡及的にプライバシーポリシーを変更して第三者(例:スーパーマーケット)と共有できるようにしたビジネスモデルが、不公正であるとして提訴・和解。消費者の最もプライベートな情報(遺伝子)の所有権と利用に関する倫理観を破壊する行為とみなされた。

    参考情報:
    FTC Says Genetic Testing Company 1Health Failed to Protect Privacy and Security of DNA Data and Unfairly Changed its Privacy Policy
    https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2023/06/ftc-says-genetic-testing-company-1health-failed-protect-privacy-security-dna-data-unfairly-changed

    FTC Finalizes Order with 1Health.io Over Charges it Failed to Protect Privacy and Security of DNA Data and Unfairly Changed its Privacy Policy
    https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2023/09/ftc-finalizes-order-1healthio-over-charges-it-failed-protect-privacy-security-dna-data-unfairly

    まとめ

    今回の連載では第2弾として、主に不動産、暗号資産、遺伝子検査、ゴーストキッチンについて、米国における革新的な事例をご紹介しました。それぞれのビジネスが社会から受けている摩擦を今回もご確認いただけたかと思います。貴社の新規事業立ち上げ時やサービス設計時における、リスクアセスメントの参考資料としてご活用いただければ幸いです。

    次回に続きます▶
    (2025/10/30執筆予定)

    当記事の執筆者

    CIT経営開発事務所 代表
    井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)

    IT・事業コンサルタント
    IT・開発エンジニア
    行政書士R6合格者未登録

    大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。