F社は、法人に対する対面での訪問営業を主軸に、コンサルティングサービスを提供しています。同社は、営業活動の効率化と新たな収益源の確保を目指し、動画コンテンツ販売による事業拡大を検討していました。導入前の課題:将来的な不確実性と投資リスク動画コンテンツ販売の立ち上げにあたり、F社にはいくつかの懸念がありました。第一に、既存の法人訪問営業というメイン事業と並行して進めるため、動画販売事業がどれだけの収益を生むかという予測が立てにくい状態でした。このような状況下で、月額費用が発生する有料のLMS(学習管理システム)を契約することに対し、投資回収の確実性が不明確であるという懸念がありました。第二に、顧客ニーズの検証が完了していない段階でのシステム導入には慎重な姿勢を示していました。高機能なシステムを導入したとしても、必要な機能が不明確であれば、結果として不要なコストや複雑な運用が発生するリスクがありました。解決アプローチ:既存サービスを活用したスモールスタートこれらの課題に対し、弊社はLMSを新規契約するのではなく、無料で公開可能なWebサイトサービスをカスタマイズし、動画販売に必要な機能を実装する手法を提案しました。具体的には、以下の3点に重点を置いてシステムを構築しました。動画配信・視聴環境の構築 サイトサービス上に、会員が動画を視聴できる限定公開エリアを設置しました。高価なプラットフォームを導入せず、既存サービスのセキュリティ設定を活用することで、コストを抑えながらコンテンツを保護する環境を整備しました。決済と顧客管理の簡素化 複雑な管理機能は実装せず、メールベースでの申し込み受付と手動でのアクセス権付与から運用を開始しました。これにより、初期開発コストを大幅に削減しました。既存業務との連携 既存の訪問営業ツールや顧客管理台帳と動画販売のステータスを連動させました。これにより、営業担当者が動画販売の検討状況を既存の顧客管理システム上で一元的に把握できるようにしました。導入結果:ランニングコストの抑制と新規顧客の獲得このアプローチにより、F社は初期投資を最小限に抑えて事業を開始しました。運用面では、ランニングコストがゼロの状態で開始できたため、営業現場がプレッシャーを感じることなく、顧客への提案に集中できる体制が整いました。また、システムがシンプルな構成であるため、現場スタッフが操作に迷うことなく、顧客からの問い合わせに対しても迅速に対応できています。その結果、運用開始後、新規法人顧客5社からの契約を獲得することができました。今回の取り組みにより、以下の成果が得られました。コストの最適化:固定費を発生させずに売上の検証が完了した。運用効率の向上:管理機能がシンプルであるため、ITリテラシーに依存しない安定した運用が可能になった。次ステップの明確化:実際に顧客が動画を利用する様子を観察できたことで、どのような機能や動画コンテンツが求められているか、改善のための具体的な指標が得られた。今後の展望現在は、実際の利用データに基づき、コンテンツの拡充と販売プロセスの改善を進めています。「コストをかけずに市場の反応を見ることができたため、自信を持って本格的な展開への投資判断ができるようになりました」とF社のご担当者は語ります。まずは低コストで仕組みを構築し、実績を作ってから必要に応じて機能を拡張していくという今回の事例は、新規事業における一つの堅実なモデルケースとなりました。(2026年取材)