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1株当たり純資産BPSとは?投資目安や計算方法、PBRとの関係性を解説
2026.06.13
2026/6/13 12:29
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企業の財務状況や株式の価値を評価する際、多くの財務指標が用いられます。数ある指標の中でも、企業の安定性や資産価値を測る上で非常に重要な役割を果たすのが、BPS(1株当たり純資産)です。
BPSは、株式投資における銘柄選びの基準として活用されるだけでなく、企業経営においても自社の財務体質を客観的に評価し、企業価値向上に向けた戦略を練るための重要な数値となります。経営陣や財務担当者が自社のBPSを正確に把握し、適切に管理することは、中長期的な成長と株主からの信頼獲得につながります。
本記事では、BPSの基本的な意味から具体的な計算方法、株式投資における目安、そしてPBR(株価純資産倍率)などの関連指標との深い関係性について詳しく解説します。自社の財務戦略の構築や、他社の企業価値評価に役立つ情報をご紹介します。
[[筆者|BPS、EPS、PBR、PERなど指標がたくさんあり覚えづらいですよね。今回はBEDE性(ベディ性)というオリジナルの覚え方も解説します]]
※当記事は投資を推奨したり予測するような意図は一切ありません。ファイナンス知識としての指標の解説になりますのであらかじめご注意ください。
- BPS(1株当たり純資産)の基本的な意味と役割
- BPSの定義、財務状況を示す指標
- 企業の解散価値と呼ばれる理由
- BPSの計算方法と純資産の考え方
- BPSの計算式
- 自己資本(純資産)に含まれる要素の内訳
- 発行済株式総数から除外すべき自己株式の扱い
- BPSの覚え方、BED/E性(ベディ性)
- 株式投資におけるBPSの目安と評価基準
- BPSが高い企業と低い企業の財務的な違い
- 業界ごとのBPS水準の違いと適切な目安の考え方
- 経営目線で自社のBPS水準を評価し分析する視点
- BPSとPBR(株価純資産倍率)の深い関係性
- PBRの計算式とBPSが果たす重要な役割
- PBR1倍割れの意味、市場からの評価
- 割安株(バリュー株)投資におけるBPSとPBR
- BPSとROE(自己資本利益率)、EPS(1株当たり純利益)との連動性
- EPSの増加がBPSの成長につながる仕組み
- ROEを高めることが長期的なBPS向上をもたらす理由
- 各財務指標を組み合わせた多角的な企業分析の重要性
- 企業の成長戦略におけるBPS向上の具体的な方策
- 内部留保の蓄積による純資産の計画的な拡大
- 自社株買いがBPSと株価評価に与える影響
- 中小企業経営者が意識すべき資本効率の改善手法
- BPSを活用する際の注意点と限界
- 帳簿価格と実際の時価の乖離によるリスク
- 無形固定資産やのれん代に関する注意点
- 過去の実績値であるBPSと企業の将来性のバランス
- BPSを理解し自社の財務戦略と投資判断に活かす
- 経営についてコチラもおすすめです【関連記事】
BPS(1株当たり純資産)の基本的な意味と役割
まずはじめに、BPSという指標がどのような意味を持ち、企業評価においてどのような役割を担っているのかを確認していきましょう。
BPSの定義、財務状況を示す指標
BPSとは、Book-value Per Shareの頭文字をとった略称です。日本語では「1株当たり純資産」と呼ばれます。純資産とは、企業が保有する総資産から、銀行からの借入金や買掛金などの負債(他他人資本)を差し引いた、企業自身の資産(自己資本)のことです。BPSは、この純資産を発行済株式総数で割ることで算出されます。
[[筆者|「BPSのBは、簿価(つまり純資産)」のB」と覚える方法があります]]
財務状況を示す指標として、BPSは企業の安定性や安全性を測る物差しとなります。BPSの数値が大きいほど、1株あたりの資産価値が高いことを意味します。資産価値が高い企業は、財務基盤が強固であり、予期せぬ経済危機や業績悪化に対しても耐性があると考えられます。経営層にとって、BPSを安定的に成長させることは、健全な財務体質を維持し、株主に対して企業の安全性をアピールする上で極めて重要です。
企業の解散価値と呼ばれる理由
投資や財務の世界において、BPSはよく「企業の解散価値」と表現されます。企業が事業活動を停止し、解散手続きに入ったと仮定します。解散するにあたり、企業は保有している土地、建物、設備、現金などのすべての資産を売却し、現金化します。現金化した資金を用いて、まず債権者への負債(借入金など)をすべて返済します。負債を全額返済した後に手元に残る財産が純資産であり、それを株主に分配した場合の1株あたりの受取額がBPSに相当します。
[[筆者|なんだかシビアな物差しですが、投資家からすれば身銭を切っているわけですから当然解散した場合のことも考えるわけです]]
事業を清算した場合に株主に還元される最低限の価値を示すことから、解散価値と呼ばれます。企業が存続している限り実際に解散して資産を分配するわけではありません。しかし、理論上はこのBPSの金額が株価の底値になると推測されます。企業の業績が低迷し株価が下落したとしても、BPSの水準までは株主の持ち分が資産によって裏付けられていると考えられるためです。
BPSの計算方法と純資産の考え方
次に、BPSを実際に求めるための計算方法と、計算式を構成する各項目の詳細について解説します。計算の仕組みを理解することで、数値をどのように改善すべきかが見えてきます。
BPSの計算式
BPSを求めるための計算式は非常にシンプルです。
BPS(1株当たり純資産) = 純資産(自己資本) ÷ 発行済株式総数
純資産が100億円であり、発行済株式総数が1,000万株である企業の計算例を見てみましょう。この場合のBPSは、100億円を1,000万株で割った1,000円となります。企業の貸借対照表(BS:バランスシートといいます)を確認し、純資産の額を把握できれば、誰でも簡単に算出することが可能です。企業のIR情報や有価証券報告書には発行済株式総数も記載されているため、外部の投資家であっても容易に自社で計算が行えます。
自己資本(純資産)に含まれる要素の内訳
計算式の分子となる純資産(自己資本)の中身について詳しく確認していきましょう。
貸借対照表における純資産の部は、主に「株主資本」と「株主資本以外の項目」に分けられます。BPSの計算において中心となるのは株主資本です。
株主資本は、さらに「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」「自己株式」などに分類されます。
資本金や資本剰余金は、企業が株式を発行して投資家から直接集めた資金です。
利益剰余金とは、企業がこれまでの事業活動で稼ぎ出した利益の中から、配当金などとして社外に流出させず、企業内部に蓄積してきた資金のことです。利益剰余金が積み上がっている企業は、過去から継続して利益を出し続けてきた実績があると言えます。利益剰余金の増加により、純資産全体が大きくなり、結果としてBPSの向上につながります。
発行済株式総数から除外すべき自己株式の扱い
計算式の分母である発行済株式総数にも注意が必要です。企業が過去に市場から自社の株式を買い戻して保有している「自己株式(金庫株)」が存在する場合、計算から除外する必要があります。
自己株式は、実質的に市場に流通しておらず、株主としての権利(議決権や配当を受け取る権利)が停止されている状態です。自己株式を分母に含めてしまうと、市場に流通している1株あたりの実質的な価値を正確に測ることができません。正確なBPSを算出するためには、発行済株式総数から自己株式数を差し引いた株式数を用いるのが一般的です。自己株式の消却を行わなくても、保有しているだけで分母が小さくなる効果があります。
[[筆者|BPSの計算方法をすぐ思いだせるでしょうか?BPSやPBRについて簡単に思い出せるようになるBEDE性について次項で解説します]]
BPSの覚え方、BED/E性(ベディ性)
BED/E性(ベディ性)という言葉をきいたことがあるでしょうか。おそらく無いかと思います。これは当記事の共同執筆者で行政書士試験合格経験もある代表が考えた指標の覚え方になります。
なんとBED/E性(ベディ性)を覚えているだけで、BPS、EPS、PBR、PER、配当性向といった覚えるのにややこしい指標をまとめて連想することができます。
ベディ性は以下のように使います。
①まず、「BED/E性」と書く
②BEDの上に線を引き、「PR」を書く
③BEDの下に線を引き、「PS」を書く
④使いたい指標ごとに分母、分子を確認する
実際に書いてみると分かりやすいと思います。
①まず、「BED/E性」と書く

②BEDの上に線を引き、「PR」を書く
③BEDの下に線を引き、「PS」を書く

④使いたい指標ごとに分母、分子を確認する
例えば、BPSの計算方法ってなんだっけ、となった場合は、
BEDの「B」と下の「PS」を丸で囲んで考えると分母が「PS」分子が「B」であることが分かります。

[[筆者|「Bは簿価(純資産)のB」、「PSはパーシェア(英語で言う発行株)で発行済み株式数」と覚えます]]
その他、EPSの場合は「E」と下の「PS」を丸で囲んで考えると分母が「PS」分子が「E」であることが分かります。

DPSの場合は「D」と下の「PS」を丸で囲んで考えると分母が「PS」分子が「D」であることが分かります。

「性」はなんなのかというと「配当性向」の「性」です。
なぜこれだけ決め打ちで「性」で覚えるのかと言うと「性」の文字が付く指標が配当性向以外あまり無いことと、「ベディ性(BED/E性)」という覚えやすい語感のためです。
配当性向の計算方法を見たい時は、横向きに見るとわかります。
スラッシュ「/」が入っているのがポイントで、「D/E」がそのまま分数になっています。

PBRの計算方法も確認しましょう。
ここで注意ですが、BED/E性を使ってPBR、PERを確認するときは一番下のPSまで円を書いてください。
そうすると、分子が「PR」で分母が「BPS」になることがわかると思います。

PERも同じ手順で分子が「PR」で分母が「EPS」になることがわかると思います。
[[筆者|「PRはプライス(株価)のPR」と覚えます]]
このようにベディ性(BED/E性)さえ覚えておけば、書く指標の計算方法も連想して思い出すことが可能です。ぜひ試験対策等で活用してみてください。
株式投資におけるBPSの目安と評価基準
つづいて、算出されたBPSの数値をどのように評価すべきか、投資判断や自社の立ち位置の確認に用いる際の目安について解説します。
BPSが高い企業と低い企業の財務的な違い
一般的に、BPSが高い企業は財務的な安定性が高いと評価されます。多額の自己資本を有しているため、不況期における赤字や、突発的な損失が発生した際にも、事業を継続するだけの体力を備えていると推測されます。自己資本が厚いことで、金融機関からの融資も受けやすくなり、新たな事業投資の機会を逃しにくくなります。
BPSが低い企業は、負債の割合が高い、あるいは過去の赤字が累積して利益剰余金がマイナスになっている可能性があります。過度な借入金に依存した経営は、金利上昇のリスクに弱く、資金繰りが悪化する懸念があります。経営層としては、BPSの推移を定期的にモニタリングし、数値の悪化が見られる場合は、収益構造の改善や資本構成の見直しを図る必要があります。
業界ごとのBPS水準の違いと適切な目安の考え方
BPSの数値そのものには、「いくら以上であれば優良企業である」といった全業種共通の絶対的な基準はありません。業界のビジネスモデルによって、必要とされる資産の規模が大きく異なるためです。
大規模な工場や高額な製造設備を必要とする製造業や、土地・建物を多く保有する不動産業などは、総資産および純資産が大きくなる傾向があります。大規模な資産保有の特性により、BPSも高水準になりやすいと言えます。
大規模な設備投資を必要とせず、人材やアイデア、ソフトウェアといった無形資産を中心に事業を展開するIT企業やサービス業では、貸借対照表に計上される有形資産が少なく、BPSは比較的低く算出される傾向が見受けられます。
BPSを評価する際は、単純に他業種の企業と比較するのではなく、同業他社の水準や業界平均と比較することが重要なポイントとなります。
経営目線で自社のBPS水準を評価し分析する視点
企業の経営者やマネージャーが自社のBPSを分析する際は、単年の数値を見るだけでなく、過去数年間の推移を確認することが求められます。BPSが年々上昇傾向にある場合、事業でしっかりと利益を稼ぎ出し、内部留保を着実に積み増している証拠となります。健全な成長軌道に乗っていると評価できます。
BPSが減少傾向にある場合は注意が必要です。継続的な最終赤字の計上によって純資産が目減りしているか、あるいは利益水準に見合わない過度な配当を実施している可能性があります。自社のBPSの現状を業界平均や競合他社と比較し、資本の蓄積が適正なペースで進んでいるかを検証することは、持続的な企業価値向上に向けた戦略立案の土台となります。
BPSとPBR(株価純資産倍率)の深い関係性
BPS単独でも企業の財務状況を測ることができますが、実際の株式市場における評価を知るためには、株価との関係性を示すPBRを理解することが不可欠です。
PBRの計算式とBPSが果たす重要な役割
PBRとは、Price Book-value Ratioの略称であり、日本語では「株価純資産倍率」と呼ばれます。PBRは、現在の株価が1株当たり純資産(BPS)の何倍まで買われているかを示す指標です。
PBR = 株価 ÷ BPS(1株当たり純資産)
株価が1,500円、BPSが1,000円の場合、PBRは1.5倍となります。
PBRの計算式において、BPSは分母として機能しています。つまり、BPSはPBRを算出するための基準となる重要な数値です。市場の投資家は、企業が保有する純資産の価値(BPS)に対して、現在の株価が割高なのか割安なのかを判断する指標としてPBRを活用しています。
PBR1倍割れの意味、市場からの評価
株式市場において、PBR1倍という水準は非常に重要な意味を持ちます。PBRが1倍である状態は、株価とBPS(1株あたりの解散価値)が等しいことを示します。
株価がBPSを下回り、PBRが1倍を割っている状態は、企業を解散して資産を分けた方が、現在の株式時価総額よりも価値が高いと市場から評価されていることを意味します。
PBR1倍割れの状況は、市場からの評価が著しく低い状態です。投資家がその企業の将来の成長性や収益性に悲観的であるためです。近年、東京証券取引所が上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しており、特にPBR1倍を継続的に下回る企業に対して、改善に向けた計画の開示と実行を強く求めています。経営陣は、自社のPBRが1倍を下回っている場合、市場との対話(IR活動)を強化し、収益性の向上や資本効率の見直しに取り組む課題を抱えることになります。
割安株(バリュー株)投資におけるBPSとPBR
投資家の視点に立つと、PBRが低い銘柄は「資産価値に対して株価が割安に放置されている」と判断され、バリュー株(割安株)投資のターゲットとなることがあります。特に、財務基盤が安定しており黒字を維持しているにもかかわらず、地味な業種であるなどの理由で注目されず、PBRが1倍を大きく割り込んでいるような企業です。
ただし、単純にPBRが低いという理由だけで投資判断を下すのは危険です。業績の悪化が続いており、将来的に赤字が累積して純資産(BPS)そのものが減少していくと見込まれる企業の場合、現在のPBRが低くても割安とは言えません。割安株を探す際は、BPSとPBRを確認すると同時に、その企業が安定して利益を出し続ける能力があるか、資産の内容に問題がないかを見極める必要があります。
BPSとROE(自己資本利益率)、EPS(1株当たり純利益)との連動性
企業の収益力を示す指標であるEPS(1株当たり純利益)や、資本効率を示すROE(自己資本利益率)も、BPSと密接に連動しています。経営戦略を考える上で、これらの指標のつながりを理解することが重要です。
EPSの増加がBPSの成長につながる仕組み
EPSとは、Earnings Per Shareの略称で、企業が1年間にあげた純利益を発行済株式総数で割ったものです。1株あたりどれだけの利益を稼ぎ出したかを示します。企業が事業活動によって純利益を生み出すと、配当金として株主に還元される部分を除いた残りの金額が、利益剰余金として企業の純資産に組み入れられます。
継続してEPSを創出し、黒字経営を続ける企業は、年々利益剰余金が積み上がっていきます。利益剰余金の増加により、純資産全体が拡大し、結果としてBPSも上昇します。つまり、高い収益力を維持してEPSを伸ばし続けることが、BPSを長期的に成長させるための最も基本かつ確実な方法となります。利益を出すことが、企業価値の源泉である自己資本を分厚くしていくのです。
ROEを高めることが長期的なBPS向上をもたらす理由
ROEとは、Return On Equityの略称で、株主が出資した資金を含む自己資本(純資産)を使って、企業がどれだけ効率的に純利益を稼いだかを示す指標です。
ROE(自己資本利益率) = 純利益 ÷ 自己資本(純資産) × 100
自己資本(純資産)を効率的に運用して高い利益(高いROE)を上げている企業は、それだけ利益剰余金を速いスピードで積み増すことができます。高いROEを維持することは、将来のBPSの成長速度を速めることに直結します。投資家は、現在のBPSの大きさだけでなく、高いROEによって将来どれだけBPSが成長していくかという期待値も株価に織り込みます。そのため、ROEが高い企業は、PBRも高く評価される傾向にあります。
各財務指標を組み合わせた多角的な企業分析の重要性
BPS、PBR、EPS、ROEといった指標は、それぞれ単独で見るのではなく、相互の関係性を踏まえて総合的に分析することが求められます。
BPSが高く安全性が高い企業であっても、ROEが低く資本を効率的に活用できていない場合、市場からの評価(PBR)は低迷する傾向にあります。逆に、現在のBPSはそれほど大きくなくても、高いEPSとROEを叩き出している新興企業は、将来の成長期待から高いPBRが付与されることがあります。自社の財務戦略を立案する際は、単にBPSを増やすことだけを目標にするのではなく、資本効率(ROE)とのバランスを取りながら、持続的な利益成長(EPS)を目指す多角的な視点を持つことが不可欠です。
企業の成長戦略におけるBPS向上の具体的な方策
それでは、経営層が自社のBPSを向上させ、ひいては市場からの評価(PBR)を高めるためには、具体的にどのような施策を展開すべきなのでしょうか。
内部留保の蓄積による純資産の計画的な拡大
BPS向上の王道は、本業の収益力を高めて純利益を拡大し、配当後の内部留保(利益剰余金)を着実に蓄積していくことです。売上高の増加、原価低減、販管費の削減といった地道な経営努力により利益率を改善します。生み出した利益を新たな成長事業や設備に再投資し、さらに大きな利益を生み出す好循環を作り出すことが理想的な姿です。
[[筆者|単純に利益を社内に溜め込むだけでは資本効率(ROE)が低下する恐れがあります。純資産(分母)ばかりが大きくなり、利益(分子)の成長がそれに追いつかない状態です]]
経営者は、蓄積した純資産をいかに有効に活用し、資本コストを上回るリターンを生み出す事業に投資していくかという、高度な経営判断が求められます。事業ポートフォリオの見直しや、採算の合わない事業の売却といった選択も視野に入れる必要があります。
自社株買いがBPSと株価評価に与える影響
BPSの計算式である「純資産 ÷ 発行済株式総数」に着目すると、分子の純資産を増やすだけでなく、分母の発行済株式総数を減らすことでもBPSを押し上げることができます。その有効な手段が「自社株買い」です。企業が余剰資金を用いて市場から自社の株式を買い戻す施策です。
自社株買いを行うと、市場に流通する株式数が減少するため、1株あたりの価値(BPSおよびEPS)が向上します。さらに、取得した自己株式によって純資産も減少するため、結果的にROEが向上する効果も期待できます。これらの指標の改善により、株式市場からの評価が高まり、株価の上昇につながるケースが多く見受けられます。資本効率の改善と株主還元を両立させる有力な財務戦略として、多くの企業で導入されています。
[[筆者|株価が低迷している、株価が下落した、といった話はニュースでもよく耳にしますが「ではどうすればこの企業は株価を元に戻せるのだろう?」という視点も大事です]]
中小企業経営者が意識すべき資本効率の改善手法
上場企業だけでなく、未上場の中小企業においても、自社の株主価値(BPS)を意識した経営は重要です。事業承継やM&Aを行う際、自社株の評価額は純資産額をベースに算定されることが多いためです。
中小企業においては、不要な資産(遊休不動産や過剰な在庫、投資有価証券など)の処分を進め、貸借対照表をスリム化することが資本効率の改善につながります。資産を売却して得た現金で借入金を返済すれば、総資産が圧縮され、財務の安全性が向上します。また、利益水準に見合わない過度な役員報酬や経費を見直し、企業内部に適正な利益を留保していく規律を持った経営が、中長期的な企業価値(BPS)の向上に不可欠となります。
[[筆者|そういった意味では、BPSは企業体質の健全性を明らかにする指標と言えるかもしれません]]
BPSを活用する際の注意点と限界
BPSは企業評価において有用な指標ですが、万能ではありません。数値を盲信せず、その計算根拠や背景にあるリスクを理解した上で活用することが重要です。
帳簿価格と実際の時価の乖離によるリスク
BPSの計算に用いられる純資産は、あくまで会計上の帳簿価格に基づいています。しかし、現実のビジネスにおいては、帳簿価格と資産の実際の時価が大きく乖離しているケースが少なくありません。保有している土地の地価が購入時より大幅に下落していたり、長期間保有している投資有価証券に含み損が発生していたりする場合、帳簿上の純資産よりも実際の解散価値は低くなります。
また、売れ残って価値が下がった不良在庫や、回収の見込みが薄い不良債権(売掛金など)が資産として計上され続けている場合も同様です。表面上のBPSが高く見えても、実態としてはそれほどの価値がない「資産の劣化」が隠れている可能性があります。企業の財務諸表を読む際は、資産の中身を精査し、必要に応じて時価評価を加味して考える慎重さが求められます。
無形固定資産やのれん代に関する注意点
近年、M&A(企業の合併・買収)を積極的に行う企業が増加しています。M&Aの際、買収先企業の純資産額を上回る価格で買収した場合、その差額は「のれん」として貸借対照表の資産の部に計上されます。のれんは、ブランド力や顧客基盤といった無形の超過収益力を表すものです。
のれんが多額に計上されている企業は、見かけ上の総資産と純資産が膨らみ、BPSが高く算出されます。しかし、買収した事業が計画通りの収益を上げられなかった場合、こののれんは価値を失い「減損処理」を行う必要があります。減損処理が行われると、多額の損失が計上され純資産が一気に減少し、BPSが急落するリスクを伴います。特に多額ののれんを抱える企業のBPSを評価する際は、そののれんが将来にわたって本当に収益を生み出す価値があるのかを厳しく見極める必要があります。
過去の実績値であるBPSと企業の将来性のバランス
BPSは、企業が過去から現在に至るまでに蓄積してきた資産の結果を示す過去の実績値です。BPSそのものは、企業がこれから新しい技術を開発したり、新市場を開拓したりすることによる「将来の成長性」を直接的に表すものではありません。
変化の激しい現代のビジネス環境において、過去の資産の蓄積だけを評価基準とすることは危険です。既存のビジネスモデルが陳腐化すれば、現在保有している資産が将来も価値を持ち続けるとは限りません。自社の戦略立案や他社の評価を行う際は、BPSによる守りの堅さを確認するとともに、事業の将来性、経営陣の手腕、市場環境の変化への適応力といった定性的な要素をバランスよく組み合わせた判断が必要です。
[[筆者|指標だけを追求して将来性が無いのであれば投資によるリターンも先細りすることになります]]
BPSを理解し自社の財務戦略と投資判断に活かす
BPS(1株当たり純資産)は、企業の財務的な安定性や解散価値を示す、株式投資および企業経営において極めて重要な財務指標です。
BPSはPBR(株価純資産倍率)を理解するための基礎となる数値であり、市場からの企業評価を推し量る上で欠かせない存在です。また、EPS(1株当たり純利益)の継続的な創出や、ROE(自己資本利益率)の向上が、結果としてBPSを成長させるという財務指標間の密接な連動性を理解することは、合理的な経営戦略を構築する上で非常に役立ちます。
一方で、帳簿価格と時価の乖離や、のれん代の減損リスクなど、会計上の数値のみを鵜呑みにすることの危険性も存在します。自社の財務体質を改善し企業価値を高めたいと考える経営陣や事業責任者、あるいは取引先や投資先の評価を行う担当者は、BPSの基本的な仕組みと限界を正しく認識することが大切です。表面的な数値の動きにとらわれず、資産の実態や資本効率、将来の成長性を総合的に分析し、自社の戦略立案や的確な判断に活かしていきましょう。
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当記事の執筆者
CIT経営開発事務所 代表
井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)
IT・事業コンサルタント
IT・開発エンジニア
行政書士R6合格者未登録
大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。


