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OJTと離職率、現場での教育体制の不備が離職の一因となっている可能性について
2026.01.04
2026/1/10 11:40
HR
HR・採用・人事・教育

人材不足が叫ばれる昨今、多大なコストをかけて獲得した人材を流出させないようにするのも人事部門の腕の見せ所になっています。
もしせっかく入社した社員が簡単に辞めてしまうような状況が続くとどのような事態を招くでしょうか。
人材獲得のコストは上がり続け、入れ替わりが激しくなるため現場が疲弊し、新たな人材への希望や期待もだんだん薄くなるかもしれません。
日常生活レベルでもいかに人材不足に対して対策を講じているか、確認できる例として、コンビニエンスストアや大手ファーストフード店での店内放送があります。
2024年末から2025年にかけて、現場で働く従業員、スタッフ、社員に対する言及のある音声が増えています。有名タレントやインフルエンサーなどが、実際に現場で働いている人材にエールとなるようなメッセージを送っています。
現場という観点で言うと、人事担当者から入社後にできることと言えば、様々な評価制度の展開と機会の提供、研修の実施などがあると思います。
その中でも研修の実施は、一部即効性があり有用な手段の一つと言えるでしょう。また昨今のキャリア志向にマッチしており、提案の妥当性を組み立てやすいかもしれません。
研修には大きく2種類あり、座学と言われるOFF-JT、現場で実際に業務を行いながら学ぶOJTがあります。
後者のOJTについては、明確にOJTだと思って教えているばかりではなく、単にやりながら教えているだけ、と意識していないことも多いでしょう。
厚生労働省が作成している「能力開発基本調査」では、国内企業、事業所、従業員を対象に能力開発の実態について調査しています。
「能力開発基本調査」は毎年10月に実施されており、企業の能力開発方針を調べる「企業調査」、事業所の教育訓練の実施状況を調べる「事業所調査」、個々の労働者の教育訓練の実施状況を調べる「個人調査」で構成されています。
この統計では「OFF-JTの実施状況」と「計画的なOJTの実施状況」を「正社員と正社員以外」を分けて考えて回答する形式になっています。
具体的には、
・正社員と正社員以外、両方実施した
・正社員のみ実施
・正社員以外実施
・実施していない
・不明
という回答区分になります。
あわせて、産業分類(建設業、製造業、消費関連製造業など)、事業所規模、企業規模、正社員率、離職率も調査があり、クロス分析が可能です
OFF-JT、OJT実施状況と離職率に関係はあるのか
上記データをもとに、実施状況と離職率の関係を探ってみます。
まずOFF-JTの実施状況と離職率については以下です。
※元データよ該当部分のみ抜粋しています。

(ーOFF-JTの実施状況:厚生労働省 一部抜粋)

(ーOFF-JTの実施状況ーグラフ:CIT経営開発)
まず、OFF-JTの実施が離職率に影響を与えているかどうかということですが、「OFF-JTを実施していない(グラフ上黄色)」を見ると、離職率が大きいほどその割合も大きくなっています。ですが、明確に関係性を示しているようには見えません。おおむねOFF-JTをしないよりは、した方がマシ、といった感じでしょうか。
離職率が高くなるほど、正社員のみ実施した事業所が減り、両方実施した事業所が増えています。
両方実施したほうが離職率が全体的に下がりそうな気もするのですが、データ上はそのようになっていません。
これは回答した事業所の正社員の雇用状況による影響です。

(ーOFF-JTの実施状況:厚生労働省 一部抜粋)
正社員率が高い事業所ほど、正社員のみ実施する割合が大きくなっています。
正社員がほとんどの職場で、数名のパートやアルバイトスタッフがいる場合、教育コストは正社員のみに充てられることが多いようです。
正社員率が高い傾向のある「正社員のみ実施」事業所は、もともと離職率が低い傾向があるのだと考えることもできるでしょう。
続いてOJTと離職率の関係ですが、「計画的なOJT」と記載されており、あやふやな状態で業務を都度教えるようなものは、OJTとしては排除しているようです。

(ーOJTの実施状況:厚生労働省 一部抜粋)

(ーOJTの実施状況ーグラフ:CIT経営開発)
おおむねOFF-JTと傾向は似ているのですが、「実施していない」割合がOFF-JTよりも高い傾向があるようです。
では、限られたリソースの中でOFF-JTとOJT、どちらに注力すべきなのでしょうか。
2つのデータを比較してみます。

(ーOFF-JT、OJTの実施状況ーグラフ:CIT経営開発)
データ上、離職率が10%以上と高まる層において、未実施率が高くなる傾向があり、特に計画的OJTについて顕著に見られます。
上記から、まず現場での教育体制の不備が、離職の一因となっている可能性が示唆されているといえます。
ですが一方で、OFF-JTの実施状況は離職率によってそこまで大きな差は見られませんでした。
まずは現場密着型のOJT体制を整備することが、離職防止への即効性が高い施策であると推測されます。
OJTは導入済みの企業が多いと思いますが、「計画的な」OJTが実施できているか、確認してみると良いかもしれません。
「OFF-JTを実施していない」よりも「計画的なOJTを実施していない」割合が大きかったのも、業務と密着したOJTの計画性が見過ごされていたということを暗に示していると考えることもできます。
OJTが「ただ都度教えるだけ」になっていないか、その場限りのOJTになっていないか、OJTに完璧な正解はないかもしれませんが、日々改善していくことで組織を変化させる可能性を秘めていると言えるでしょう。
当記事の執筆者
CIT経営開発事務所 代表
井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)
IT・事業コンサルタント
IT・開発エンジニア
行政書士R6合格者未登録
大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。


