INSIGHT

内部収益率(IRR)とは、マイナスの意味や目安、計算方法、デメリットから利回りとの違いまでわかりやすく解説

2026.03.31

    restore

    2026/4/12 00:00

    • 戦略・フレームワーク

    • ビジネスモデル

    • 統計

    • データ分析

    • 評価

    • 経営

    シェア  >

    内部収益率(IRR)とは、マイナスの意味や目安、計算方法、デメリットから利回りとの違いまでわかりやすく解説 スライド画像

    企業が新たな事業への投資や設備導入を検討する際、その投資が本当に利益を生むのか、あるいは資金を投じる価値があるのかを判断するための指標は欠かせません。数ある財務指標の中でも、特にお金の時間的な価値を考慮できる指標として重視されているのが、内部収益率(IRR:Internal Rate of Return)です。

    IRRを正しく理解することは、限られた経営資源を最適に配分するための第一歩となります。今回は、IRRの基礎知識から具体的な計算方法、マイナスが意味すること、そして投資判断の目安となる基準まで、実務に即して詳しく解説します。この記事を通じて、自社の投資戦略にIRRを取り入れるための具体的なイメージを掴んでいただければ幸いです。

    1. 内部収益率(IRR)の基礎知識と「利回り」との違い

    まずはじめに、投資判断の指標であるIRRの定義と、混同されやすい利回りとの違いを明確にします。資金配分を決定する際、なぜIRRを重視すべきなのか、その本質的な理由を確認していきましょう。

    IRR(Internal Rate of Return)の定義と仕組み

    IRRとは、投資によって将来得られるキャッシュフローの現在価値と、初期投資額を等しくする割引率のことを指します。簡単に言えば、その投資プロジェクトが期間全体を通じて、年利換算でどれだけの収益を生み出すかを示す数値です。

    ここで重要なのが「時間価値」という概念です。今日受け取る100万円と、5年後に受け取る100万円では、その価値は異なります。今日手元にある100万円は、運用することで5年後には100万円以上の価値を持つ可能性があるからです。IRRは、時間の経過によるお金の価値の変化を計算に組み込んでいるため、より実態に近い収益性を評価できます。

    [[筆者|例えば2つの投資案があるとき、どちらとも10%の利益を生む場合、より短い期間で利益を得られる方がIRRは高くなります。]]

    IRRと一般的な利回りは何が違うのか?

    不動産投資や資産運用でよく使われる「表面利回り」や「実質利回り」と、IRRは混同されがちですが、その性質は異なります。

    一般的な利回りは、主に「投資額に対して年間でどれくらいの収益(インカムゲイン)があるか」という点に着目した単年度の指標です。例えば、1億円の物件から年間500万円の家賃収入があれば、利回りは5%となります。しかし、この利回りには「いつ、いくらの現金が手元に戻ってくるか」という現金の流出入のタイミングは考慮されていません。

    一方でIRRは、投資の開始から終了(売却や事業終了)までのすべてのキャッシュフローを対象にします。投資期間中の収益だけでなく、最終的な売却益(キャピタルゲイン)や、その収益が得られる時期の早さも数値に反映されます。

    ~Tips:割引率~
    将来受け取る予定のお金を、現在の価値に換算する際に用いる割合のことです。将来の100万円は、現在の100万円よりも価値が低いと考えるため、一定の割合で差し引いて計算します。

    IRRが中小企業の経営判断に必要な理由

    中小企業においては、大企業以上に資金の流動性と投資効率が重要視されます。限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)をどのプロジェクトに投下すべきか、優先順位を付ける際にIRRは非常に有効です。

    例えば、10年かけてゆっくりと大きな利益を出すプロジェクトと、3年で投資額を回収して次の投資に回せるプロジェクトでは、たとえ最終的な総利益額が同じでも、経営に与えるインパクトは異なります。早期に資金を回収し、再投資に回せる方が、複利効果によって企業全体の成長スピードは早まるからです。IRRは「資金回収の早さ」を高く評価する性質があるため、スピード感を重視する経営判断に適しています。

    2. IRRの計算方法と具体例

    つづいて、実務で使えるIRRの計算方法をご紹介します。数式自体は非常に複雑ですが、経営者が実務でどのように数値を導き出し、読み解くべきか、具体的な計算例を用いて確認していきましょう。

    IRRの計算式とExcelでの活用法

    IRRの数式を解くには、高次方程式を用いる必要があり、手計算で行うのは現実的ではありません。実務では、Excelの「IRR関数」を使用するのが一般的です。

    Excelでの使い方は非常にシンプルです。

    1. セルに、投資期間ごとのキャッシュフロー(現金の出入り)を入力します。

    2. 初期の投資額はマイナスの数値(例:-10,000,000)として入力します。

    3. 次の年からの収益はプラスの数値として入力します。

    4. 「=IRR(範囲)」という関数を入力すると、内部収益率が算出されます。

    このように、実務的には複雑な計算はソフトに任せ、数値の意味を解釈することに集中するとよいでしょう。

    【計算例】設備投資プロジェクトのIRRを算出する

    具体的なシミュレーションを考えてみましょう。ある中小企業が1,000万円を投じて新しい製造設備を導入すると仮定します。

    ・初期投資(0年目):-1,000万円

    ・1年目の利益:200万円

    ・2年目の利益:300万円

    –3年目の利益:400万円

    ・4年目の利益:500万円

    この5年間のキャッシュフローをExcelのIRR関数に入力すると、IRRは約13%と算出されます。この数値は、この設備投資が年利13%の金融商品で運用されているのと同等の効率であることを意味します。

    もし、別の投資案(例えば、広告宣伝費への投入)があり、そのIRRが15%であれば、収益効率の面では広告宣伝の方が優れているという判断材料になります。

    [[筆者|設備投資と広告宣伝費という異なる投資に対して、IRRという共通の基準で比較できるのがポイントです]]

    以下はGoogleスプレッドシートで計算した例です。投資額が同じ1000万、利益も同じ400万で期間の短いもの、投資金額が1億円で利益がはるかに大きいものと比較したときのIRRの値です。たとえ利益が大きかったとしてもIRRが低くなっていることに注目してください。

    IRR計算時に注意すべきキャッシュフローの捉え方

    IRRを算出する際に注意すべき点は、入力する数値を、会計上の利益ではなくキャッシュフローにすることです。

    減価償却費などの非資金費用は、会計上の利益を減らしますが、実際の現金は手元に残っています。逆に、売掛金として利益に計上されていても、現金が回収できていなければ投資には回せません。IRRはあくまで「手元にいつ現金があるか」をベースにした指標であることを忘れないでください。

    ~Tips:フリーキャッシュフロー(FCF)~
    会社が事業活動を通じて稼ぎ出した現金の合計から、事業を維持するために必要な設備投資などの支出を差し引いた、自由に使える現金のことを指します。IRRの計算にはこのFCFを用いるのが通説です。

    3. IRRがマイナスになる意味とは?要因と対策

    それでは、IRRがマイナスになった場合の解釈について確認していきましょう。マイナスが示す意味と、その際に検討すべき経営判断の選択肢をご紹介します。

    IRRがマイナス=元本割れ

    IRRがマイナスの値を示すということは、その投資プロジェクトが投資した金額(元本)を回収しきれないことを意味します。銀行預金に例えるなら、預けたお金が利息を生むどころか、手数料などで目減りして戻ってくるような状態です。

    経営上の判断としては、経済的な合理性だけで考えるならば「投資すべきではない」あるいは「即刻撤退すべき」ということなります。時間の経過とともに会社の資産が毀損していく状態であるため、深刻な状況であると捉えるべき場合が多いです。

    [[筆者|もちろん状況によっては、マイナスのまま続行するという判断もあり得ます]]

    IRRがマイナスになる主な3つの要因

    なぜ期待していたプロジェクトのIRRがマイナスになってしまうのでしょうか。主な要因として以下の3点が挙げられます。

    1 キャッシュフロー課題評価 
    2 初期投資の肥大化
    3 回収期間の長期化

    それそれ詳しくみていきましょう。

    1. 予測キャッシュフローの過大評価

      事業計画の段階で、売上や利益を甘く見積もりすぎてしまい、実際の収益が初期投資を補えないケースです。市場環境の変化や競合の出現により、当初の計画が未達に終わることで起こります。

    2. 初期投資の肥大化

      設備導入費用やシステム開発費が予算を超えて膨らんでしまうケースです。分母となる投資額が大きくなればなるほど、回収のハードルは上がり、収益率は悪化します。

    3. 回収期間の長期化

      収益が出る時期が当初の予定よりも後ろ倒しになるケースです。IRRはお金を受け取る時期が遅くなるほど低くなる特性があるため、たとえ将来的に大きな利益が出たとしても、そこに至るまでの時間がかかりすぎるとマイナスになることがあります。

    マイナスと判断されたプロジェクトをどう扱うべきか

    もし進行中のプロジェクトや検討中の案件でIRRがマイナスとなった場合、どのような判断を下すべきでしょうか。基本的には、サンクコストに囚われず、早期の撤退や計画の見直しを行うのが定石です。

    ただし、例外もあります。例えば「その事業を継続することで、他部門の主力製品の売上が維持されている」といったシナジー効果がある場合や、「将来的な市場独占のための先行投資」である場合などです。数字上のIRRがマイナスであっても、その投資が会社にとって戦略的に不可欠な「授業料」や「防衛策」であるなら、数値以外の価値を考慮に入れる必要があります。

    中小企業の現場では、社長の熱意や現場の思い入れだけで赤字事業を続けてしまうことが多々あります。個人的には、IRRという客観的な指標で現実を直視することは、従業員の雇用を守り、会社を存続させるための必要な誠実さであると思います。

    [[筆者|客観的な指標からは目をそむけたくなるかもしれませんが、リスクはできるだけ早期に把握すべきですので、心を鬼にして取り組みましょう]]

    4. 投資判断の目安となるIRRの基準:ハードル・レートの考え方

    次に、算出したIRRが何パーセント以上なら投資すべきか?という具体的な目安についてご紹介します。業界平均や自社の資金コストに基づいた、妥当な基準値の導き方を確認していきましょう。

    最低限の収益率の設定と判断

    企業が投資を行う際に、最低限クリアすべき収益率を超えない投資は原則として行うべきではないと言えます。

    最低限の収益率を設定する際のベースとなるのが「WACC(加重平均資本コスト)」です。これは、銀行からの借入に伴う利息(負債コスト)と、株主やオーナーが期待する収益(株主資本コスト)を、その構成比で加重平均したものです。簡単に言えば「その資金を調達するために、会社が実質的に支払っているコスト」です。

    IRRがWACCを下回っている場合、その投資は調達コストすら賄えていないことになります。

    IRRの目安と傾向

    IRRの目安は、業種やビジネスモデル、リスクの大きさによって大きく異なります。

    ・不動産投資:5%〜10%

    安定した家賃収入が見込めるため、比較的低めの設定でも投資が行われる傾向にあります。

    ・製造業・設備投資:10%〜15%

    設備の老朽化や市場の変化というリスクがあるため、一定以上の収益性が求められます。

    ・IT・スタートアップ・M&A:20%〜40%以上

    リスクが高く、失敗の可能性も大きいため、成功した際の期待収益率は非常に高く設定されます。

    これらの数値はあくまで目安ですが、自社の属する業界の常識と照らし合わせることで、自社の基準が妥当かどうかを判断できます。

    中小企業が設定すべき現実的な目標値

    多くの中小企業において、WACCを厳密に算出するのは難しいかもしれません。その場合は「銀行の借入金利」に「事業固有のリスクプレミアム」を上乗せして考える方法も実用的です。

    例えば、借入金利が1.5%であれば、そこに事業の不確実性を加味して5%〜8%程度の利益を上乗せし、10%程度をハードル・レート(最低限の収益率)の目安とする、などが考えられます。これならば、万が一計画が少し下振れしても、借入金の返済が滞るリスクを低減できます。

    ~Tips:リスクプレミアム~
    不確実な投資を行う際に、安全な投資(国債など)に比べて上乗せされる期待収益のことです。「リスクを取るための上乗せ報酬」と言い換えることができます。

    5. IRRのメリットとデメリット

    つづいて、IRRのメリットと、それだけに頼ることのリスク、デメリットを整理します。多角的な視点を持つことが、誤った投資判断を防ぐポイントとなります。

    IRRのメリット:規模の異なる投資を横比較できる

    IRRのメリットは、投資金額の大きさが異なるプロジェクト同士を「投資効率」という一つの尺度で比較できることです。

    例えば「1億円を投じて10年で1.2億円にするプロジェクト」と「1,000万円を投じて3年で1,200万円にするプロジェクト」では、後者の方がIRRは高くなります。これは時間価値が考慮されているからですね。手元資金が限られている中小企業にとって、いかに効率よく資金を回転させるかは至上命題です。IRRを使えば、金額の大小に惑わされず、投資先を判断することが可能になります。

    IRRの3つのデメリット

    IRRにはデメリットがあります。

    1 規模を無視する
    2 キュッシュフロー順序に弱い
    3 複数のIRRが存在する場合がある

    それぞれ詳しく見ていきましょう。

    1. 投資規模(絶対額)を無視してしまう

      IRRは「率」の指標です。IRR 50%の投資(ただし投資額は10万円)と、IRR 10%の投資(ただし投資額は1億円)では、会社に残る現金の絶対量は後者の方が圧倒的に多くなります。率にこだわりすぎると、小粒な投資ばかりを選んでしまう危険があります。

    2. キャッシュフローの順序に弱い(再投資の仮定)

      IRRは、途中で得られた収益を「同じIRRの利率で再投資できる」という前提に基づいています。しかし、現実にはIRR 30%の事業で得た現金を、再び30%の高利回りで運用できるチャンスはそう多くありません。

    3. 複数のIRRが存在してしまう特殊なケース

      キャッシュフローのプラスとマイナスが期間中に入れ替わる(例:中盤で大規模な修繕費が発生する)ようなプロジェクトでは、数学的にIRRが複数算出されたり、算出不能になったりすることがあります。

    IRRの高い投資に固執すると縮小均衡に陥る

    効率の良い(IRRの高い)小さな投資ばかりを優先し、効率はそこそこだが大きな利益を生む(IRRは低いが規模が大きい)大型投資を避けるようになると、会社全体の収益額は伸び悩み、成長が止まってしまいます。IRRはあくまで「効率」を測るものであり、会社の「体力」や「市場シェア」を大きくするための指標ではないことを、しっかりと理解し活用する必要があります。

    [[筆者|自社の投資が小ぶりなものに偏っている場合、もしかしたら効率を重視しすぎる社内文化が形成されているかもしれません]]

    6. IRRとNPV(正味現在価値)の違いと使い分け

    次に、IRRの弱点を補うために不可欠な「NPV」との併用方法をご紹介します。

    NPV(正味現在価値)とは

    NPV(Net Present Value)、正味現在価値とは、将来得られるキャッシュフローの現在価値から、投資額を差し引いた「金額」のことです。

    IRRが「効率(%)」を示すのに対し、NPVは「その投資によって、最終的にいくら手元の現金が増えるか(円)」という富の絶対量を示します。計算結果がプラスであれば投資価値があり、マイナスであれば価値がないと判断します。

    IRRとNPVが矛盾したとき、どちらを優先すべきか

    IRRは高いがNPVは低い(効率は良いが利益額は小さい)案件と、IRRは低いがNPVは高い(効率は落ちるが利益額は大きい)案件が競合することがあります。

    この場合、ファイナンスの定石では「NPVが高い方」を優先すべきとされています。なぜなら、企業の最終的な目的は収益率を競うことではなく、手元に残る現金の絶対量を最大化し、企業価値を高めることにあるからです。

    ただし、手元資金(キャッシュ)に厳しい制約がある場合は、まずはIRRで資金効率を高め、回転を速めるという戦略も正解になり得ます。

    ~Tips:NPV(正味現在価値)~
    Net Present Valueの略。将来の収益を現在の価値に割り引いた合計から、初期投資額を引いたもの。プラスであれば、その投資によって企業価値が向上したと言える。

    内部収益率(IRR)をビジネスに活用する汎用的な4つのパターン

    つづいて、IRRを実際のビジネス現場でどのように応用すべきか、業種を問わず汎用的に活用できる4つのパターンをご紹介します。意思決定を支える強力なツールとしてどう機能させるか、その具体的な切り口を確認していきましょう。

    1 投資の優先順位付け
    2 事業撤退基準の設定
    3 調達・支出構造の最適化
    4 組織の共通言語としての活用

    それぞれ詳しくみていきましょう。

    1. 異なる性質を持つ投資案件の優先順位付け

    最も基本的な活用法として、予算が限られている中での「投資先の選別」があります。

    例えば、老朽化した設備の更新(いわゆる守りの投資)と、新規事業の立ち上げ(いわゆる攻めの投資)を比較する場合、それぞれ期待される収益のタイミングや期間が大きく異なります。会計上の利益額だけで比較すると、どうしても規模の大きいプロジェクトが有利に見えてしまいますが、IRRを用いることで同一の尺度で測ることが可能になります。

    また、部門をまたいで投資予算を争う際、IRRという共通の物差しがあることで、感情や声の大きさに左右されない、客観的で公平な意思決定が可能になります。

    [[筆者|金額と効率を分けて評価するという原則を持つことで、社内の様々なプロジェクトを平等に評価できます]]

    2. 「時間の価値」を織り込んだ事業撤退基準の策定

    プロジェクトの継続か撤退かを判断する出口戦略での活用も可能です。

    多くの現場では、一度始めた事業が赤字でなければ、なんとなく継続してしまう傾向があります。しかし、IRRを基準に据えると、たとえ利益が出ていても「期待していた収益率を下回っているので撤退」と判断することが可能になります。

    具体的には「5年以内にIRRが10%を上回る見込みが立たなければ撤退する」といった基準をあらかじめ設けておき、ズルズルと投資を続けるリスクを排除します。時間の経過とともに価値が目減りするというIRRの特性を、経営のスピード感を維持するために活用する手法です。

    [[スズメさん|すでに撤退した過去のプロジェクトがある場合、IRRはいったいどのくらいだったのか、改めて計算してみるのもよいかもしれません]]

    3. 資金調達・支払い構造の最適化(リース vs 買取)

    資産導入時の支払い条件を比較検討する際にもIRRは有効です。

    高額な資産を導入する際、一括で購入するか、リースを利用するか、あるいは分割で支払うかといった選択があります。リースは月々の支払額は抑えられますが、長期的には手数料が含まれるため、総支払額は一括購入より高くなります。

    ここで、それぞれの支払いパターンにおける現金の流出をIRR(あるいはその裏返しである借入コスト)の視点で分析することで、自社の現在の資金繰りと照らし合わせ、どちらが今の自社にとって経済的に合理的か、を冷静に判断できるようになります。表面的な金利だけでなく、手元資金を別の高収益な事業に回した際の機会費用を含めた比較が可能になります。

    4. 組織全体の資本効率を測る共通言語としての活用

    すこし応用的な活用として、社内の「投資文化」の醸成についてご紹介します。

    売上や利益という指標は現場に浸透しやすいですが、「投下した資本に対してどれだけの期間で価値を生んだか」という視点は、現場レベルでは意識されにくいものです。各事業部や各支店のパフォーマンスを評価する際、PL(損益計算書)上の利益だけでなく、投資回収の速さ(IRR)を評価項目に加えることで、マネージャー層の意識を「資本効率」へと向けることができます。

    「利益を出すのは当たり前、いかに少ない元手で、いかに早く回収し、次の成長投資へ回せるか」という思考が組織に定着すれば、企業全体の資金循環は劇的に向上します。IRRは、経営層と現場が「お金の効率」について対話するための、高度な共通言語となりえるのです。

    ~Tips:機会費用~
    ある投資を選択することで、選ばれなかった他の投資から得られたはずの利益のことです。IRRを活用した比較は、この機会費用を最小化し、最善の選択を行うために不可欠なプロセスです。

    7. IRRを正しく理解し、精度の高い経営判断へ

    内部収益率(IRR)は、お金の時間価値を考慮した、非常に精度の高い投資効率の指標です。利回りでは見えてこない、資金回収のタイミングや複利効果を数値化できる点がIRRの強みです。

    投資に「絶対」はありませんが、IRRのような客観的な指標を判断基準に持つことで、主観や現場の希望的観測に左右されない、比較的強固な判断が可能になります。

    まずは自社の過去の投資プロジェクトをExcelで計算してみることから始めてはいかがでしょうか。過去の成功や失敗をIRRで測り直すことで、次なる一手への重要なヒントが見つかるはずです。

    経営についてコチラもおすすめです【関連記事】

    当記事の執筆者

    CIT経営開発事務所 代表
    井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)

    IT・事業コンサルタント
    IT・開発エンジニア
    行政書士R6合格者未登録

    大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。