INSIGHT

コンジョイント分析とは?ExcelやRで行う方法からアンケートや結果の例、効用値までわかりやすく解説

2026.02.18

    restore

    2026/3/31 10:43

    • 戦略・フレームワーク

    • HR・採用・人事・教育

    • DX・効率化

    • データ分析

    • 統計

    シェア  >

    コンジョイント分析とは?ExcelやRで行う方法からアンケートや結果の例、効用値までわかりやすく解説 スライド画像

    新製品の開発や価格改定を検討する際、「どの機能が一番喜ばれるのか」「いくらなら買ってもらえるのか」という問いに頭を悩ませるマーケティング担当者は少なくありません。アンケートで「欲しい機能」を単純に聞くと、回答者は「すべての機能が欲しくて、価格は安い方がいい」と答えがちです。しかし、実際の購買現場では、消費者は予算という制約の中で、何かを得るために何かを諦めるトレードオフを行っています。

    この消費者の本音を数値化し、科学的に売れる組み合わせを導き出す手法が「コンジョイント分析」です。今回は、コンジョイント分析の基礎知識から、ExcelやRを使った具体的な解析手順、実務で役立つ価格設定の考え方まで網羅的に解説します。

    コンジョイント分析の基本:消費者の「トレードオフ」を可視化

    まずはじめに、コンジョイント分析の定義と、アンケート手法としてのビジネスの意思決定において信頼性が高い理由についてご紹介します。

    1. コンジョイント分析とは何か

    コンジョイント分析(Conjoint Analysis)とは、製品やサービスを構成する要素、「属性」を組み合わせた複数の仮想製品(プロファイル)を提示し、回答者にそれらを評価・選択させることで、各要素が購買決定に与える影響度を算出する多変量解析手法の一つです。

    最大の特徴は、消費者が無意識に行っている「機能は良いが価格が高い」「機能はシンプルだがデザインが良い」といった比較検討(トレードオフ)を再現できる点にあります。

    2. なぜ単純なアンケートでは不十分なのか

    一般的なアンケートで「価格」「品質」「ブランド」の重要度を5段階で評価させると、多くの回答者はすべてに「重要である」と回答してしまいます。これでは、商品企画において「コストをかけてでもブランドを維持すべきか、あるいはブランドを妥協して価格を下げるべきか」という具体的な判断ができません。

    コンジョイント分析は、複数の要素をセットで提示して「選ばせる」ため、回答者が「何かを優先するために何を犠牲にしたか」という行動データを得ることができます。これが、実務において強力な武器となる理由です。

    コンジョイント分析を支える3つの重要用語

    分析を始める前に、必ず理解しておくべき3つの概念があります。これらの用語は、分析結果(効用値)を解釈する際の基礎となります。

    1. 属性(Attribute)

    属性とは、製品やサービスを構成する「切り口」のことです。

    例:スマートフォンの場合、「ブランド」「価格」「バッテリー寿命」「画面サイズ」などが属性にあたります。

    2. 水準(Level)

    水準とは、各属性の中に含まれる具体的な「内容」や「値」のことです。

    例:「価格」という属性に対して、「5万円」「8万円」「11万円」という具体的な選択肢が水準です。

    3. 効用値(Utility / Partial Utility)

    効用値(部分効用値)とは、消費者が各水準に対して感じる「満足度」や「好ましさ」を数値化したものです。この数値が高いほど、その水準は消費者に選ばれやすいことを意味します。コンジョイント分析の最終的なゴールは、この効用値を算出することにあります。

    ~Tips: ダミー変数とは~
    統計解析を行う際、「ブランドA」「ブランドB」といったカテゴリデータを計算可能な数値に置き換える手法です。Excelで分析する際には、このダミー変数の作成が必須工程となります。

    コンジョイント分析をビジネス戦略に用いる3つの方法

    コンジョイント分析は企業の意思決定を最適化するための戦略的なシミュレーションツールです。業種を問わず汎用的に活用できる、ビジネス戦略への3つの応用パターンをご紹介します。

    1. 製品ポートフォリオの最適化とカニバリゼーションの回避

    新製品を投入する際、最も避けなければならないのは、自社の既存製品のシェアを奪い合ってしまう「カニバリゼーション」です。コンジョイント分析を用いることで、市場全体のニーズをカバーしつつ、各製品が異なる属性(機能やデザイン、価格帯)で高い効用を発揮するようにラインナップを設計できます。

    たとえば、高性能を求める層には特定のスペックを強化したモデルを、コストパフォーマンスを重視する層には機能を絞ったエントリーモデルを割り当てます。それぞれのターゲット層にとっての効用値を最大化させることで、ラインナップ全体での市場占有率を最大化する戦略が可能になります。

    2. コスト削減と顧客満足の両立(バリューエンジニアリング)

    製品開発において、すべての機能を最高水準にすることは、コスト増を招き利益を圧迫します。コンジョイント分析によって算出された重要度を確認すると、実はコストが大幅にかかっている特定の機能が、顧客の購買決定にはほとんど寄与していないことが判明するケースが少なくありません

    このように顧客にとって「効用値が低い(=こだわりが少ない)」と判断された属性のスペックをあえて下げることで、品質感を維持したままコストを削減できます。逆に、低コストで実現できるが効用値が非常に高い属性が見つかれば、そこにリソースを集中投下することで、効率的に競合との差別化を図る戦略が立てられます。

    3. 競合の参入や価格変更に対するシナリオプランニング

    コンジョイント分析の真骨頂は、手元にあるデータを使って「もしも」の状況を予測できるシミュレーション機能にあります。自社製品だけでなく、競合他社の製品構成も属性・水準の組み合わせとして定義することで、市場のシェア予測を行うことができます。

    競合他社が価格を10%下げてきた場合、自社のシェアはどう変動するか」「競合が新しい機能を搭載してきた際、自社は価格据え置きで対抗すべきか、それとも別の機能を強化すべきか」といったシナリオを事前に検証できます。市場の変化に対して後手に回るのではなく、データに基づいた定量的な予測を持って先手を打つ、攻めの戦略構築が可能になります。

    コンジョイント分析の具体的なやり方:5つのステップ

    次に、プロジェクトの立ち上げから分析完了までの流れを解説します。特に、アンケート設計の精度が分析結果の8割を決めると言っても過言ではありません。

    ステップ1:属性と水準の選定

    まずは、消費者が購入時に重視する要素をピックアップします。

    • 属性数は3〜7個程度に絞るのが一般的です。多すぎると回答者の負担が増え、データの精度が落ちます。

    • 水準は、現実的にあり得る範囲で設定します。

    禁則設定の重要性

    実務でよくある失敗が、現実離れした組み合わせを提示してしまうことです。例えば、「最高級ブランド」なのに「価格が1,000円」といった組み合わせがアンケートに出ると、回答者は「この調査は信頼できない」と感じ、適当に回答し始める傾向があります。これを防ぐために、特定の組み合わせを出現させない「禁則設定」の検討が必要になります。

    ステップ2:直交表を用いたプロファイルの作成

    すべての属性と水準を掛け合わせると、提示すべき組み合わせ(プロファイル)が膨大になります。例えば「属性3つ×各3水準」でも27通り、これが5属性になると数百通りに及び、人間が比較できる限界を超えます。

    そこで「直交表」という実験計画法の手法を用います。直交表を使うことで、全体の組み合わせの一部を抜き出すだけで、全組み合わせを調べたのと同等の統計的妥当性を得ることができます。

    ステップ3:アンケートの実施

    作成したプロファイルを回答者に提示します。主な提示方法には以下の種類があります。

    • 順位付け法:複数のカードを好ましい順に並べ替えてもらう。

    • 評定尺度法:各プロファイルに対して「非常に買いたい」から「全く買いたくない」まで5〜7段階で評価してもらう。

    • 選択型(CBC):3つ程度の選択肢から「最も買いたいもの」を1つ選んでもらう(現在の主流)。

    ステップ4:データの集計と解析

    回収したデータを数値化(コーディング)し、回帰分析などの手法を用いて各水準の効用値を算出します。

    ステップ5:結果の解釈とシミュレーション

    算出された効用値を使い、「もし新製品の価格を1万円下げたら、市場シェアはどう変わるか?」といったシミュレーションを行います。

    Excel(エクセル)でコンジョイント分析を行う手順

    高価な専用ソフトがなくても、Excelの標準機能である「分析ツール」を使えば、簡易的なコンジョイント分析が可能です。ここでは「評定尺度法(点数付け)」を用いた手順を解説します。

    1. データの整形(ダミー変数の作成)

    アンケート結果をExcelに入力します。

    例えば「価格」属性に「3万円」「5万円」「7万円」の3つの水準がある場合、列を3つ作り、該当する水準に「1」、それ以外に「0」を入力します。

    ※統計上の理由から、一つの属性につき一つの水準(列)を削除して計算する必要があります(基準化)。

    2. 回帰分析の実行

    1. Excelの「データ」タブから「データ分析」をクリックします(表示されない場合はアドインで有効化してください)。

    2. 「回帰分析」を選択します。

    3. 「入力Y範囲」にアンケートの評価点(1〜5点など)を選択します。

    4. 「入力X範囲」に、作成したダミー変数の範囲を選択します。

    3. 結果の読み取り

    出力された「係数」が、そのまま各水準の「効用値」となります。

    • 係数がプラスで大きいほど、その要素は好まれています。

    • 係数がマイナスの場合は、その要素が選好を下げていることを示します。

    Excelを用いた具体的な重回帰分析の数式モデルについては、Microsoftの公式サポートページや統計学の基礎文献(例:東京大学教養学部統計学教室編『統計学入門』など)を参照し、モデルの妥当性を確認することをお勧めします。

    R言語を用いた高度なコンジョイント分析

    より大規模なデータや、精緻な分析を行いたい場合は、統計解析ソフト「R」の使用を推奨します。特に「conjoint」パッケージは、直交表の作成から分析までを一貫して行えるため非常に便利です。RをWeb上で動作させるプラットフォームがいくつかありますので、まずは検索して簡単に試すことをオススメします。

    1. パッケージのインストール

    R

    install.packages("conjoint")
    library(conjoint)

    2. 直交表の作成

    Rを使えば、属性と水準を指定するだけで最適なプロファイルを自動生成できます。

    R

    # 属性と水準の定義
    experiment <- expand.grid(
      Price = c("Low", "Medium", "High"),
      Brand = c("A", "B", "C"),
      Function = c("Basic", "High")
    )
    # 直交表の作成
    design <- caFactorialDesign(data=experiment, type="orthogonal")

    3. 分析の実行

    回答データ(preferences)とプロファイル(design)、属性リスト(levn)を読み込ませることで、個別の効用値だけでなく、属性ごとの重要度を一括で算出できます。

    R

    caPartUtilities(y=preferences, x=design, z=levn)

    Rを用いるメリットは、単なる平均値だけでなく、回答者ごとの好みのばらつきを考慮した「階層ベイズ法(HB法)」などの高度なモデルへ拡張できる点にあります。

    実務で役立つ「価格コンジョイント」の考え方

    コンジョイント分析が最も威力を発揮するのは「価格設定」です。

    価格の効用値と支払意欲(WTP)

    「価格」という属性は、通常、金額が上がるほど効用値が下がります。この効用値の「下がりの幅」と、他の機能(例えば防水機能の有無)による効用値の「上がりの幅」を比較することで、「消費者は防水機能に対していくらまでなら追加で払ってくれるか、つまり支払意欲(Willingness to Pay)を円単位で換算することが可能です。

    利益最大化のシミュレーション

    単に「売れる組み合わせ」を探すだけでなく、各水準の実現にかかるコスト(原価)を考慮に入れることで、以下の計算が可能になります。

    利益 = (シミュレーション上の予測シェア × 市場規模) × (販売価格 - 原価)

    この視点を持つことで、コンジョイント分析は単なる「好み調査」から、経営判断に直結するツールへと進化します。

    コンジョイント分析で陥りがちな3つの罠

    大変便利なコンジョイント分析ですが、注意点やデメリットもあります。どの分析手法もそうですが、その特性を十分に理解した上で使用しましょう。

    1. 属性の「範囲」による歪み

    例えば、価格の水準を「100円、110円、120円」とした場合と、「100円、500円、1,000円」とした場合では、算出される価格の重要度が全く異なります。水準の幅を広げすぎるとその属性が不当に重要に見えてしまい、狭すぎると無視されてしまいます。競合他社の価格帯や、次世代製品で想定されるスペックを慎重に吟味する必要があります。

    2. 「見栄」と「本音」の乖離

    特に高級品や社会貢献性が絡む製品の場合、アンケートでは「環境に良いもの」を選びつつも、実際の店舗では「安いもの」を買うという乖離が起こります。コンジョイント分析はこれを軽減する手法ですが、ゼロにはできません。過去の実売データとの照合(キャリブレーション)を行うことをオススメします。

    3. ターゲット層の不一致

    どんなに精緻な分析を行っても、回答者が「自社のターゲットではない人」であれば、有効なデータになりません。Web広告のターゲティング機能やパネル調査を活用し、実際に購入を検討する層からデータを集めることが鉄則です。

    コンジョイント分析についてよくある質問

    コンジョイント分析を実務に導入する際、多くのマーケティング担当者や経営層が抱く懸念について、ビジネスの視点からお答えします。

    Q1:コンジョイント分析の実施には、多額の予算や高度な専門知識が必要ですか?

    オンラインアンケートツールやExcelを活用し、知識にはAIを用いることでスモールステップから始めることが可能です。大規模な市場調査として外部の専門機関に委託する場合は相応のコストがかかります。

    まずは社内や既存顧客を対象に、属性を3〜4個に絞った簡易的な調査を行い、分析の流れを把握することをおすすめします。専門知識については、本記事で紹介したExcelの「分析ツール」など、自動化された機能を活用することで、統計の深い理論をすべて習得していなくても一定の示唆を得ることが期待できます。

    Q2:信頼できる結果を得るために、どの程度のサンプル数が必要でしょうか?

    一般的には、統計的な安定性を考慮して1つのターゲットセグメントあたり100〜300サンプル程度を集めることが推奨されるケースが多いです。サンプルが多すぎても精度が出ないこともあります。

    ただし、B2Bなどのニッチな市場においては、サンプル数を追うよりも「実際に購買決定権を持つ人」に正しく回答してもらうデータの質が重要になります。母集団の大きさに合わせて、無理のない範囲で信頼性を担保できる設計を検討するのが望ましいでしょう。

    Q3:B2B製品や形のないサービス(SaaSなど)でも活用できますか?

    はい、有効であると考えられます。コンジョイント分析は形のある製品だけでなく、保守サポートの有無、契約期間、セキュリティレベルといった「目に見えないサービス属性」の価値を測るのにも適しています。

    ただし、B2Bの場合は購入者と利用者が異なるなど意思決定プロセスが複雑なため、アンケートの対象者を「誰にするか」を慎重に定義することが、精度の高い結果を得るための鍵となります。

    Q4:分析結果(シェア予測など)はどの程度、実際の売上と一致しますか?

    コンジョイント分析は、従来の「欲しいものを聞く」調査よりも実購買に近いデータが得られやすいとされていますが、市場環境や競合のプロモーション、認知度などの外部要因をすべて網羅できるわけではありません。

    算出された数値を「絶対的な予言」として捉えるのではなく、施策の優先順位を決めたり、複数の戦略案を比較検討したりするための「羅針盤」として活用するのが、ビジネス上の意思決定においては推奨されます。

    Q5:属性や水準を詰め込みすぎると、どのようなリスクがありますか?

    属性が多すぎると、回答者が検討すべき組み合わせが複雑になり、直感的な判断ができなくなってデータのノイズが増える懸念があります。

    回答者の疲弊を防ぐためにも、属性数は5〜7個程度に抑え、1人あたりの回答時間を10分〜15分程に収めるような設計がよく用いられます。もし多くの要素を検証したい場合は、事前の定性調査で要素を絞り込むステップを挟むことが、結果的に質の高い分析につながるでしょう。

    データに基づいた「勝てる」製品戦略を

    コンジョイント分析は、消費者の複雑な心理を「効用値」というシンプルな数字に分解してくれる有用な手法です。根拠のない「勘」や「声の大きい人の意見」に振り回されることなく、自信を持って製品開発や価格決定を進められるようになります。

    まずは、身近な製品の「属性」と「水準」を書き出すことから始めてみてはいかがでしょうか。小規模な社内アンケートをExcelで分析するだけでも、これまで見えてこなかった意外なニーズが発見できるはずです。

    統計についてコチラもおすすめです【関連記事】

    当記事の執筆者

    CIT経営開発事務所 代表
    井上 隆寛(いのうえ・たかひろ)

    IT・事業コンサルタント
    IT・開発エンジニア
    行政書士R6合格者未登録

    大手システム開発会社にてフルスタックSE兼Webデザイナーとして従事。2021年にコンサルタントとして独立し、企業に対するITコンサルティング・ソリューション導入支援事業を開始。2023年にはイベント企画・運営事業を新たに展開、2024年には行政書士試験に合格。現在はIT・AIコンサルティング、システム開発、エンターテイメントの3事業を柱に、企業の技術顧問や講師としてICT教育やプログラミング授業も手がける。